第630話
電車を降り、ホームを歩き出した。
いつもと同じ…
見慣れた景色である。
「ようやく、地元に戻ってきたんだな!これで、一安心が出来るな。」
【ホッ…】と、ため息が溢れていた。
階段を、一段飛びで上がり…改札口を駆け抜けていた。
駅から家までは、およそ…10分ぐらいの距離。
木嶋は、携帯を取り出し…
「家族に、連絡を入れよう!」自宅に電話をした。
「プルッ、プルー、プルー」呼び出し音が鳴っている。
母親が電話に出た。
「もしもし…今、どこなの?」木嶋に尋ねていた。
木嶋は、
「今、駅です。これから、家に帰ります。」木嶋が、母親に答えていた。
母親は、
「帰って来るのが、少し遅いね!早く、戻ってきなさい。」木嶋に伝えた。
木嶋は、
「はい。」母親に言葉を返し、電話を切ったのである。
駅の東口は、《駅ビル》、《商店街》、《地下街》、《デパート》などが…たくさん点在している。
それに反比例するように…駅の反対側は、殺風景な環境である。
元々(もともと)は、駅前は、工場があり、異様な雰囲気を醸し出していた。
小さいときの木嶋は…
駅前にある、企業に、いつかは、就職がしたいな!と考えていた時期があった。
それは、時間が経てば経つほど…難しいと、考えてしまった。
木嶋の地元は、これからの10年先を見据えた…明確な《ビジョン》を立てている。
その《ビジョン》の中に、木嶋が…就職が出来れば良いな!と思っていた企業も含まれていた。
実際…木嶋の勤務している企業も、地元から…【藤沢市】に工場が移転したのだ。
「いつかは、駅前周辺も、生まれ変わらないと進歩がない。」そう…毎日、考えていた。
駅の反対側を通り、家に向かって歩いていた。
木嶋の携帯が…
「プルッ、プルー、
プルー」鳴り出していた。
聞き慣れたら着信音である。
木嶋は、携帯を取り出した。
「はるかからかな?」疑問心を持っていた。
携帯の画面を覗くと、木嶋の想像した通り、【はるか】からである。
木嶋が、電話に出た。
「もしもし…木嶋ですが!」
「はるかです。木嶋さん、元気にしていましたか?」はるかが、木嶋に聞いていた。
木嶋は、
「元気にしていますよ!って言っても…昨日、電話で話したと思うけど…!」はるかに尋ねていた。
はるかは、
「あっ…そうでしたよね。昨日、話したばかりですよね。私、ボケていますね。」木嶋に苦笑いをして答えていた。
木嶋は、
「はるかさん、まだ…ボケるのは、早いよ!」はるかを、叱咤したのである。
続けて…
「完璧な人間など、この世界にいませんよ。」感覚として話したのである。