第629話
人は、何故…地元に戻ると安心をするのだろう?
それは、地元意識が強いからだと思うのである。
地元にいると、どこに…何があるかを、把握している《使い勝手》の良さである。
かれんさんと一緒に過ごしていた…2日間は、戻る時間がなかったため、一抹の《寂しさ》があった。
毎年、夏になると…両親の故郷に帰省するが、車がないと自由が利かない。
その点、都会に住長くんでいると、周りの環境が(かんきょう)良すぎて、出その場所からたくなくなるのは、必然なのかも知れない。
【パーン】
電車の《クラクション》が鳴っていた。
木嶋は、黄色の線の内側にいた。
【プシュー】ドアが開いた。
ホームにある時計を見つめた。
「時間は、まだ、午後6時…か!」木嶋は、呟きつつ…
「いつもよりは、人が少なく感じる。」そう思っていた。
最後尾の車両に乗車した。
足元にある…『ヒーター』が効いていた。
座席も、暖房が入っている。
「この時期は、飲酒をして、電車に乗ったら…暖かくて寝てしまうな!」木嶋は、一人で自問自答していた。
以前…小室さん、富高さんたちと、会社の最寄り駅で、酒をして、電車の中座席に座った瞬間…気持ち良すぎて寝てしまい、終点の【東京駅】まで気付かずに、車掌さんに起こして頂いたことがあった。
そのことを、会社の最寄り駅で、小室さん、富高さんに話したことがあり…
富高さんも、
「木嶋君、【東京駅】で起こして頂いたなら、まだいいよ。自分は…何度も、乗り過ごして、一番遠くまで行ったのは、【栃木の宇都宮駅】で気付いたことがあるよ!」木嶋に答えたことがあった。
そのことを、心の中で思い出していた。
「今日の場合は、飲酒をしていないから、無事に、最寄り駅で降りられそうだな!」これが、偽ざる…今の心境なのだ。
【プルル…】発車ベルが鳴り響いていた。
「ドアが閉まります。ご注意下さい。」ホームアナウンスが流れていた。
【ジリリ…】ブザーか鳴っている。
車掌さんが、
「東海道線、ドアが閉まります。ご注意下さい。」バンドマイクで、アナウンスしていた。
【プシュー】と、音を発てながら、ドアが閉まった。
ゆっくりと、電車が、走り出した。
ホームを抜けたと同時に、加速を始めた。 木嶋は、
「電車にも、最高速度の制限は、あるのだろうか?」ふとした…疑問を抱いても、不思議ではなかった。
地元まで、あと…10分ぐらいの距離である。
木嶋は、携帯を取り出し…着信履歴を確認していた。
「さすがに、はるかからも、連絡がない。少し…気持ちが落ち着くかな!」
木嶋は…
【フー】とため息をついた。
《ガタン、ガタン》
鉄橋を渡っている音が聴こえていた。
「もうすぐ、地元だ!」
【ホッ…】と、したのである。