第58話
はるかは、そんな木嶋の姿を見ながら、愛しく思ったのだ。
はるかは、木嶋が、左手にしていた腕時計を見たのだ。
「木嶋さんが、今、左腕にされている時計は、CASIOのG-SHOCKですか?」木嶋に尋ねたのだ。
木嶋は、
「そうですよ。CASIOのG-SHOCKですよ。」はるかに答えたのだ。
はるかは、
「腕時計は、いくつあるのですか?」木嶋に話したのだ。
木嶋は、
「腕時計は、2つだけですよ。自分は、仕事で出張があるわけではないので…。工場内作業ですから『カルチェ』などのブランドメーカーの時計を持つこともないかな?腕時計は、2つないと壊れた時に困るから…。」はるかに話したのだ。
はるかは、
「私は、『カルチェ』の腕時計を、自分で買いましたよ。」
木嶋は、
「はるかさん、自分で買ったの?『カルチェ』の腕時計を…何か信じ難いな…!」
「木嶋さん、私を疑っているのですか?」はるかは、木嶋に問い掛けたのだ。
木嶋は、
「はるかさんを、疑っているのではないですよ。ただ、クラブ『H』にいて、誰からもプレゼントをされたことがないなんて、あり得ないと思っているのですが…。」はるかに問い掛けていた。
はるかは、
「今まで、プレゼントを戴いたことなどないですよ。」木嶋に強調していた。
木嶋は、
「先ほど、麻美さんから電話があったでしょう?」
はるかは、
「うん、うん。」木嶋の質問に頷いていた。
木嶋は、話しを続けていた。
「はるかさん、クラブ『H』では、色んな人に、私の欲しい物を《買って買って》とオネダリして、ブランド商品を貰っていると…麻美さんが、話していたことは事実なのかな?」はるかに聞いていた。
「クラブ『H』に来るお客さんの中には、私の気を引こうと誕生日やX'mas、ホワイトデーにプレゼントを買って持ってくる人はいます。さすがに、要らないから持って帰って下さいとは言えずに貰ってしまうのです。」木嶋に話したのだ。
木嶋は、
「はるかさんの言葉を信じることしか、今の自分には出来ないよ。」はるかに伝えたのだ。
はるかは、
「麻美さんは、プロですから木嶋さんを振り向かせようと、私を悪者にしているのですよ。」
木嶋は、
「そうかな〜!そう思いたくないよ。」はるかに話したのだ。
「木嶋さん、誰にでも優しいですから…しっかりして下さい。」はるかに叱咤されたのだった。
木嶋は、
「これから気をつけます。はるかさん、まだ、時間は大丈夫なのですか?」はるかに聞いたのだ。
はるかと木嶋は、コーヒーショップにある柱時計で時間を見たのだ。時計の針が、午後10時を回っていた!
木嶋は、
「はるかさん、時間は、まだ、平気なの…?」はるかに聞いていた。
はるかは、
「そろそろ帰ろうかな?」ホットティーを飲みながら木嶋に話していた。
木嶋は、
「そうだね。帰ろうか!」テーブルの上に置いてあったホットコーヒーを飲み干したのだった!
はるかは、荷物を持ちながら座席をたった。
木嶋は、リュックを背中に背負って席を立ち、会計伝票を右手に持ちながら階段を下りて行った。
2人の階段を下りて行く。
「カツーン、カツーン、カツーン」靴の音が、コーヒーショップ『Y』に【こだま】していく。」
はるかは、一足先に、コーヒーショップ『Y』の外で木嶋を待っていた。
会計を終えた木嶋は、
「今日は、長い時間ありがとうございました。」はるかに声を掛けたのだ。
はるかは、木嶋と別れる直前に、
「木嶋さん、今日は、こちらこそ楽しい時間を過ごしました。ありがとうございます。今度は、私の誕生日前日の12月21日土曜日ですね。近くなりましたら、また連絡します。」
木嶋に、そう言い残して、雑踏の中に消えて行った。
木嶋も、はるかの後ろ姿が見えなくなった時に、横浜駅に向かい歩き始めたのだった。