第542話
「明日、富高さんに…麻美さんの店で開催される《X'masparty》のことを聞いてみよう!」木嶋は、そう心に決めたのである。
しかし…
木嶋は、はるかと、かれんさんの存在がいることを忘れそうになった。
「はるかと、かれんさん…二人に、何か?《X'masプレゼント》を渡さないといけないかな?」一人で、ふと、想いに更けていた。
「ここ数年のことながら、はるかの誕生日とX'masプレゼントは、一緒にすれば問題ないはず…!かれんさんに、何を贈ればいいのだろう?贈らないと…何事も平等と言っているから…!今年は、財政面で、かなり苦労しないと!」木嶋は、ボヤいていた。
一人で考える場所と時間が、現実に欲しいのである。
街中は…
【X'masソング】が流れて始めていた。
木嶋の最寄り駅でも、【イルミネーション】が飾られていた。
《バブルの時から比べると…ショボくなったな!》
木嶋は、目を瞑り、バブルの頃を懐かしく感じていた。
1989年~91年。
日本は、【バブル景気】に沸いていた。
新製品を作れば…瞬く間になくなり…
どんな高額の商品でも、店頭に並べば…そのほとんどが、売れて行く。
『ジュリアナ東京』が代表されるように…
連日連夜、若者たちが、お立ち台に上がり…深夜まで踊り、歌い、飲み歩いていた人が、大勢いたのである。
【バブル景気】が弾け…
日本は、経験したことがない、長い景気低迷期に突入してしまったのである。
木嶋の乗り換え駅である横浜駅は…
【イルミネーション】は、以前と変わらず…たくさん飾っている。
「今の世代の人たちは、仲間意識が薄れているのかも知れないな!逆に、自分たちの考え方を押しつけるのも、無理難題だな。自主性を尊重すればいいのだろうか?」木嶋は、悩んでしまった。
「はるかに、毎年、《X'mas》のことを聞いても…家族のパーティーがあると言われてしまう。それが、自分自身に苦痛になっている。かれんさんに、今年の《X'mas》の予定を尋ねてみよう。」木嶋は、携帯を右手に取り、かれんさんのメールアドレスを探していた。
かれんさんのメールアドレスを、送信履歴から見つけた。
木嶋は、すかさず…
「かれんさん、木嶋です。お久しぶりです。元気にしていますか?今年の《X'mas》は、何か?予定がありますか?もし、何もないようでしたら…一緒に過ごしませんか?」かれんさんのメールアドレスに、送信をしたのである。
「何か?久しぶりに味わう…緊張感だ。ダメだったら…どうしようかな?」木嶋は、最悪な結果ばかりを気にしてしまう。
普段の木嶋は、物事を、【プラス思考】に考えているが、肝心な時は、【マイナス思考】になってしまう。
これから直さない…メンタル面の弱さである。