第524話
木嶋は、
「このイニング。無得点で終わりますかね!」年配の人の言葉を、半ば信用していた。
「カキーン」
打球音が響いていた。
木嶋は、
「オーライ、オーライ」ゲームなのに、なぜか?声を出していた。
打球は、平凡な…センターフライで終わった。
これで、ツーアウト、ランナーが、セカンド。
「まだ、気が抜けないな!」今の木嶋の率直な感想である。
ピッチャーが投げた。
「カキーン」
再び、良い打球音が聞こえてきた。
《今度は、フェンス越えするんじゃないの?》偽らず…【ハムレット】の心境である。
フェンス…ギリギリのライトフライ。
これで、スリーアウトチェンジである。
「助かった。」ホッ…と胸を撫で下ろしていた。
先ほど…年配の人が予言していた通りである。
木嶋は、
「本当に、無得点で終わりましたよ!」安堵な表情を浮かべていた。
年配の人は、
「野球にも、流れがあるように…ゲームと言っても…流れがある。それを上手く掴むか?掴まないか?で…勝負が見えてくる。」木嶋に話していた。
木嶋は、
「本当ですよね。人生に於いても、同じことが言えますよね!」年配の人に答えていた。
人生でも、《勝ち組》と《負け組》がある。
木嶋は、まだ…結婚をしていないので、負け組である。
「確かに、流れを掴むか?掴まないか?で、状況は変わりますよね!」年配の人に話していた。
年配の人は、
「そうだよ。お兄ちゃんだって…好きな女性の一人や二人いるでしょ?」木嶋に尋ねていた。
木嶋は、
「好きな女性はいますよ。」年配の人に答えた。
年配の人は、
「その女性を大切にしないと…。いずれは、一大決心をしなければならない時があるぞ。」木嶋に話したのである。
木嶋は、頷くことしか出来なかった。
ゲームは、最終回である。
「このまま…リードを保っていられるかな?」木嶋は、不安になっていた。
相手は、コンピューターである。
「たまたま…先ほどのイニングが、無得点で終わったのであって、後攻めが有利なのは、間違いない。」木嶋は呟いていた。
年配の人は、
「何とか…追加点を取りたいな。打順は、ピッチャーのところまで…回ってくるのかな?木嶋に聞いていた。
木嶋は、
「ピッチャーのところまで、打順が回って来ます。」年配の人に告げた。
年配の人は、
「代わりのバッターは、何人いるのかな?」
「代打は、3人残っていますよ。右バッターが…1人。左バッターが…2人です。」木嶋は、年配の人に伝えた。
年配の人は、
「チャンスなら、代打を出して…1点でも多く点数を取らないとね。」木嶋に話していた。
木嶋は、
「代打を出して、1点でも多く…取りに行くが鉄則ですからね。」年配の人に答えた。
年配の人は、
「作戦は、セーフティバントかな?」木嶋にアドバイスした。
木嶋は、
「セーフティバントですか?」年配の人に聞いていた。
年配の人は、
「打順は、下位打線。コンピューターも、隙があるはず…そこが狙い目だ。」木嶋に伝えたのである。