第522話
木嶋は、ピッチャーを交代した。
「残り…2イニング。何とか…頑張ってくれないとね!」祈るような気持ちで、継投策に出た。
「いくら…百戦錬磨の《コンピューター》も、そう簡単に終わらないだろう。」
木嶋は、リリーフピッチャーの初球を何にするか…迷っていた。
「まずは、ストレートで…探りを入れるか!」コンピューターに投げたのである。
「カキーン」
木嶋は、
「マズイ!」思わず叫んでしまった。
当たりの良い打球が、左中間を抜けた。
「いきなり、ツーベースヒットか!この展開では、逆転されそうな雰囲気になっていますよ!」年配の人に話し掛けていた。
振り向くと…年配の人の姿が見えない。
「どこに行ってしまったのだろう?」木嶋は呟いていた。
「最初から、気軽に自分へ話し掛けて来たから、何となく…おかしいな?と感じていたから、この展開になっても、不思議に思わないし…驚きも少ないな!」
「野球ゲームは、自分の真骨頂だ。ここからが、実力を発揮しないと!」
木嶋が、得意とするゲームは…《野球ゲーム》なのだ。
【それを、見ず知らずの人に、戦略を、真っ向から、否定をされてしまうと、自信が持てなくなってしまう。】
夜間高校の《クラスメート》である…林田さんに言われるなら、諦めがつくのである!
「ここから先は、自分の自由になる。相手に合わせる必要がないからね。」
「早く終わらせて、林田さんに合流しよう。」木嶋は、試合を終わらせたくて仕方ないのである。
すると…先ほどまで、木嶋の隣りにいた年配の人が戻ってきた。
「あっ…お兄ちゃん。
まだ、やっていたんだね。」年配の人が、木嶋に声を掛けてきた。
木嶋は、
「急に、姿が見えなくなったので…帰られたのかと、思いました。」年配の人に答えていた。
年配の人は、
「黙っていなくなって悪いね。先方から、何度も掛かって来ていたので、連絡をしていたんだ。」木嶋に話していた。
木嶋は、
「仕事の話しですか?」年配の人に聞いていた。
年配の人は、
「もちろん、仕事の話しだ。野球が佳境に入っているところに、水を差すようなことが出来ないよね?」木嶋に尋ねていた。
木嶋は、
「時と、場合に依りますよね!」年配の人に話していた。
年配の人は、
「そうだね。早く…ゲームを終わらせよう。」木嶋に伝えた。
木嶋は、
「もちろんです。」年配の人に告げたのである。
年配の人は、
「いきなり…ノーアウトで、ランナーがセカンド。厳しい展開だ。」木嶋に尋ねていた。
木嶋は、
「いきなり…《ガツン》と打たれてしまいましたよ。」苦笑いをしていた。
年配の人は、
「1点は仕方ないが、同点にされないようにしないと…。そうだ。ダブルプレイで、ランナーをアウトにすれば、点を取られる心配もないぞ。」木嶋にアドバイスした。
木嶋は、
「ダブルプレイを狙うには、状況が厳しいと思います。」年配の人に答えたのであった。
年配の人は、
「諦めないで、最後まで努力しよう。」木嶋を励ましていた。