第520話
木嶋は、コンピューターに…勝ち越しのランナーを許していた。
「マズイですね。ノーアウトで、ランナーが…ファースト。相手は、どう来ますかね?」年配の人に尋ねていた。
年配の人は、
「セオリーなら、《送りバント》だか、打って来るだろう。」木嶋に伝えた。
木嶋は、年配の人の言葉が…重くのし掛かっていた。
「守備の《シフト》は、バントシフトで様子を見てみよう。」木嶋は、一人で呟いていた。
木嶋は…
《バントシフト》を選択した。
年配の人は、
「初球…様子を見るために、《バントシフト》もいいね。」木嶋の戦略に関心を示していた。
初球…内角低めに、ストレートを投げた。
コンピューターも、誘い球と認識していたらしい。
木嶋は…守備のシフトを、《中間守備》にした。
中間守備とは、当たりが良ければ…ダブルプレイを狙っていた。
木嶋は、2球目に投げるボールは、スライダーを選択した。
コンピューターは、まさかの《送りバント》をした。
木嶋も、慌てて…ボールをファーストに投げるが、セーフになってしまった。
木嶋は、
「いやいや…コンピューターに、ウラをかかれました。」年配の人に苦笑いを浮かべていた。
年配の人は、
「相手も、考えているんだよ。」木嶋に諭すように話していた。
木嶋は、
「そうですよね。このままでは、いけないですよね。ノーアウトで、ランナーが…ファーストとセカンド。さて、どうするべきか?」悩んでいた。
年配の人は、
「打ってくるだろうから、《バックホーム》に備えた方がいいよ。」木嶋に話していた。
木嶋は、守備のシフトを…バックホームに合わせていた。
コンピューターに投げた。
年配の人が、言う通り…打って来たのである。
木嶋は、すかさず…ボールをホームに投げた。
ランナーは、自重した。
「まさか…自重するとはね。ノーアウト…フルベース。確実に、1点取られてしまう。どうしたらいいですかね?」木嶋は、年配の人に問いかけていた。
年配の人は、
「守備のシフトを、バックホームにするしかないね。どちらにしても、ホームをアウトにしないとね!」木嶋に話していた。
木嶋は、頷きながら…
「それしかないか!」年配の人に答えていた。
コンピューターに向けて、ボールを投げた。
「カキーン」
いい打球音が響いていた。
打球は、レフト方向に飛んでいた。
幸い…バックホームのシフトにしていたので、浅いレフトフライで、アウトになった。
サードランナーは、自重するしかない。
次のバッターが登場。
打順は、上位である。
ここでも、守備のシフトは…バックホームである。
木嶋は、ボールを投げた。
「カキーン」
今度は、真芯で…捉えられたような気がしていた。
打球の行方を追った。
ライトの守備を、急いで…後ろに戻していた。
ライトフライである。
サードランナーは、ホームに向かっていた。
ライトから、ホームに急いで投げた。
手に汗を握る攻防である。
ランナーと、送球が同時ならアウトである。
タイミングは…アウトである。
木嶋は、
「最大のピンチを切り抜けたぞ。」
「ホッ…と」胸を撫で下ろしたのである。