第509話
かれんさんは、
「私、そろそろ…病室に戻りますので、一緒に行きませんか?」木嶋に聞いていた。
木嶋は、
「分かりました!病室まで行きますよ。」かれんさんに告げ、【エスコート】したのである。
松葉杖を使い、一所懸命に歩いている。
木嶋は、その姿を見るたびに…胸が締めつけられそうであった。
側で…かれんさんが、倒れないように支えている。
やっとの思いで、病室に着いた。
「木嶋さん、ありがとうございます。」木嶋に話しながら、ベッドに腰を掛け、松葉杖を壁に立て掛けた。
木嶋は、
「自分も、かれんさんと会えて、楽しかったよ。」かれんさんに、本音で答えていた。
かれんさんは、
「また、会える日を楽しみに待っていますね。」木嶋に伝えた。
木嶋は、
「もちろんです。自分も、一日でも早く…かれんさんが、病院から退院して、デートしたい。」かれんさんに告げた。
かれんさんは、顔を赤くして…
「はい。頑張ります。」木嶋に抱負を述べていた。
木嶋は、安心したかのように、
「ホッ…と」胸を撫で下ろしていた。
「それじゃあ…帰るね!」かれんさんに話し、病室をあとにした。
「かれんさんと、また…デート出来る日が来るかな?」木嶋の、かれんさんに対する想いが…段々(だんだん)と強くなっていた。
病院を出て、木嶋は…《携帯電話》の《マナーモード》を解除した。
「これから、はるかに会わないといけないのか?何か…気が重いな!」木嶋は、一人で…ボヤいていた。
東神奈川駅に到着。
「はるかに、電話をするか…」
木嶋は、着信履歴から、はるかの番号をスクロールして発信した。
「プッ、プッ、プルー」呼び出し音が鳴り響いている。
はるかが、電話に出た。
「もしも~し…はるかです。」
「木嶋です。今…東神奈川の駅です。これから横浜に向かいます。」はるかに伝えた。
はるかは、
「木嶋さん、私は…まだ、買い物をしていますので、いつものコーヒーショップ『Y』で待ち合わせでいいですか?」木嶋に尋ねていた。
木嶋は、
「コーヒーショップ『Y』ですね。いいですよ。そこに、到着したら…はるかさんに、連絡をいたします。」はるかに話したのだ。
はるかは、
「待ってま~す。」声のトーンが、いつもより高く…電話を切ったのだ。
木嶋は、携帯を、Gパンのポケットに入れ、改札を通り、京浜東北線のホームに降りて行く。
電車が到着した。
木嶋は、
「今日のことは、どう話せばいいのだろう?」不安になりながらも、電車に乗った。
「まもなく…横浜、横浜です。」車内アナウンスが聞こえていた。
電車が、横浜駅に着いた。
階段を降り、 改札を出て、コーヒーショップ『Y』に向かった。
いつものように…2Fに行く。
木嶋は、1Fでもいいが…
はるかは、人通りを気にするので、2Fで待つことになっている。
空いている席を見渡した。
「今日は、角の席に…座ろう!」木嶋は、座席に座った。
普段なら、夕刊紙をリュックから取り出すが、急いでいたので…手ぶらで来てしまった。
「一度、はるかに連絡をしよう!」木嶋は、携帯をGパンのポケットから取り出した。
「プッ、プッ、プルー」呼び出している。
はるかか、電話に出る気配が感じられない。
「一度、電話を切ろう。気がつけば…連絡が来るだろう。夕刊紙を買ってくれば良かった。」木嶋は、一人で呟くのであった。