第481話
木嶋は、照れていた。
人に貶されることは多いが、誉められることは数えるくらいである。
かれんさんは、
「木嶋さん、どうしたのですか?顔が赤くなっていますよ。」木嶋に話したのだ。
木嶋は、
「ビールを飲んだからですよ。自分は、飲めば顔に出てしまうのです。」かれんさんに、照れているとは言えないでいた。
女性店員さんが、《焼き鳥の盛り合わせ》を持ってきた。
「お待たせしました。《焼き鳥の盛り合わせ》です。」木嶋とかれんさんに伝え…
「以上になりますが、何か?他のご注文がございましたら、お声をお掛け下さい。」テーブルから離れて行く。
木嶋は、
「かれんさん、どれを食べますか?」かれんさんに尋ねていた。
かれんさんは、
「私は、《ねぎま》でいいですよ。木嶋さんは…?」テーブルから離れて行く。
木嶋は、
「そうですね!ここ最近…飲みに行く機会が多いので、《レバー》にしようかな?」かれんさんに答えていた。
かれんさんは、お皿から…丁寧に分けていた。
その姿を見ていると、甲斐甲斐しく、愛しくなるのである。
木嶋の家の周りには、【焼き鳥屋】が、3軒…点在している。
どの店も、個性がある。
その中で、1店舗だけが、瓦斯を使っている。
残りの2店舗は、備長炭を使用している。
備長炭にも、一長一短である。
その中で、最高級の炭と言われるのが、和歌山県の備長炭である。
店舗によっては、和歌山県以外の産地の炭を、現地から取り寄せていたり、炭の卸し専門業者から購入するところもある。
20世紀末(せいきまつ…
会社で、夏に納涼祭を開催していたときがあった…。
瓦斯を使うのもあれば…
炭を使い…
《焼きそば》、《焼き鳥》、《フランクフルト》などを売っていたころが、懐かしく感じていた。
そのとき使っていた炭は、【なら】の切炭である。
【なら】切炭は、ホームセンター、バーベキュー場、キャンプ場などで気軽に買うことができる。
【なら】切炭は、着火してから燃焼、灰になるまで、時間的に持たない。
それに比べ…
備長炭は、燃焼してから灰になるまでの火力の持ちに違いが出るのだ。
食通の人に、瓦斯で焼いた《焼き鳥》と、炭で焼いた《焼き鳥》を食べ比べると…一目瞭然で分かるらしい。
木嶋には、それが判らないのである。
人は、色んな土地に、出歩かないと、分からないことばかり…
人混みが苦手で出不精の人もいる。
そういうことを考えると、小室さんのように…一人でいるのも良いのかも知れない。
木嶋は、生涯を一人で過ごそうと考えたことはない。
それが、はるかや、かれんさんなら文句なしである。
かれんさんは、
「木嶋さんは…《焼き鳥》美味しいですよ。炭で焼いているんですかね?」木嶋に問いかけていた。
木嶋は、
「いや~難しい質問だね。ここのお店の人に聞くのが一番の答えだと思うよ。」かれんさんに告げたのである。