第46話
木嶋は、耳を澄ませて呟いていた。
「宇多田ヒカルさんの曲は、素敵な曲が多いよね。カラオケで歌うにはキツイかも知れないよね!」はるかに話していた。
はるかは、
「そうですよね。カラオケで歌うにはハードな曲が多いですね!今、流れているこの曲は大好きですよ。」木嶋に話したのだ。
流れている曲は、【光】だった。
この曲は、木嶋も気に入っているのだった。
何故だろう…この曲が流れていると、木嶋は、ふと、感じることがあるのだった。
はるかが、
「木嶋さん、何かあったのですか?」木嶋に声を掛けた。
木嶋は、
「いや〜、この曲を聴いていると、はるかさんとオーバーラップしていますよ!」はるかに言っていたのだった。
はるかは、
「そんなに、私とオーバーラップしますか…?」
木嶋は、
「オーバーラップしますね。
はるかさんと宇多田ヒカルは同じ年代ではないですか?年齢が近い分、歌を聴いていると感じるのかも知れません!はるかさん、今度、一日、時間を作って頂いてデートをしませんか?いつも、カフェばかりでデートらしいことをしていないので…お互いが、スレ違いが多く、時間が取れないな…と感じていると思います。クラブ『H』に行けば、はるかさんと話しは出来ます。周りが喧騒の中では、まともに話しが出来るとは思いません。ゆっくりと出来る時間がほしいなと思いますがいかがでしょうか?」はるかに尋ねていた。
はるかは、
「クラブ『H』の中では話しをするにも周囲の環境もあるので、木嶋さんの話していることは間違いではありません。今は、自分の女友達と遊びに行きたい時間も欲しいです。今だから出来ることもあると思います。もう少し待って戴けますか?一日、時間を空けることが出来れば木嶋さんに連絡をしますので、ご理解をして頂きたい。私は、木嶋さんと、短時間でも会えるのが嬉しいのです。クラブ『H』にバイトしていますが、アフターで、お客さんと会うのだって禁止されています。私は、木嶋さんをお客さんと思っていません。今日だって、木嶋さんに会いたくて、電話したのですよ。」木嶋に話したのだった。
木嶋は、
「分かりました。はるかさんがそこまで言うのなら理解をします。一日、時間が空く日を、麒麟のように、首を長〜くして気長に待ちますよ。アフターで人と会うのは、店にも依ると思いますが、そういうのは、厳しい規律と言うか暗黙の了解と言えばいいのかな?あるとは正直、思わなかったよ。もし、見つかったらどうなるのかな?」はるかに聞いてみたのだ。
はるかは、
「勿論、首ですよ。」左手で、自分の首を真横にシグナルしていた。
木嶋は、
「マジで…。そんな話しを聞いたら、はるかさんと会うのにリスクが伴うと言うことだよね?もう、会わない方がいいのではないでしょうか?」木嶋は別れるつもりはないのに、悪戯ぽく話してみた。
はるかは、真顔で、
「何で、木嶋さんと別れないといけないのですか?何も悪いことはしていないでしょう!見つかった時に、考えればいいと思っているのに、そんなことを言わないで下さい!」木嶋に怒りをぶつけていた。
木嶋は、
「分かりました。
そんなに怒らないで下さい。最初から別れるつもりで話した訳ではないですよ。誤解をしないで下さい…今、はるかさんと出会えて、こうして話しが出来ることが今の自分には、とても大切なことです。はるかさんにとって、自分がいることで、マイナスに作用する時は、《別れる》と思います。」はるかに伝えたのだ。
はるかは、
「分かりました。」木嶋に言葉を返したのだ。
木嶋は、コーヒーショップ『Y』に入ってからどれくらい経ったのだろうと腕時計を見たのだった。時刻は、午後11時を回っていた。
「はるかさん、そろそろここを出ないと家の門限に引っ掛かるのではないですか?」はるかに聞いていた。
はるかも、左手にしていた腕時計を見たのだ。
「そうですね。木嶋さんも、電車の時間があるので帰りましょうか?」木嶋に問いかけた。
木嶋は、
「帰りましょう。」会計カードを左手に持ちながら、1Fのレジまで階段を降りていく。
はるかは、会計をしている木嶋に、
「先に帰ります。」声を掛けて、コーヒーショップ『Y』を出て行く。
木嶋も、会計が終わり、はるかのあとを追うように、コーヒーショップ『Y』を出て、
「プルー」発車ベルが鳴り響く横浜駅をあとにしたのだった。