第455話
木嶋は、騙されやすい。
良く家族に言われるのは、馬鹿正直と…。
確かに、何事においても、人を信用し過ぎてしまうのであった。
「先ほどの会話の中で…何となく、小室さんが、ドタキャンしそうな雰囲気を醸し出していた。」
このあと、木嶋の良からぬ予感が当たることになる。
午後の休憩時間が終わり、5時まで…あと少し。
作業エリア後方は、窓である。
そっと覗くと…
空は、台風が通過して、雲一つない青空が広がっていた。
また、フェー ン現象で、工場全体が蒸し暑くなっていた。
【いや~暑くて…たまらない。身体が、5時まで持つのかな?】木嶋は、自分自身の体調も気に掛けていた。
人は、急激な暑さに耐えられない。
少し前までは、日射病と言われていたが、今の時代は、熱中症が主である。
会社の中で、毎年のように熱中症で倒れる人がいる。
木嶋は、一度も…熱中症になったことはない。
職場の同僚が、医務室に運ばれ、見舞いに行くことはあった。
ここ数年は、自分の体力低下を気にしていた。
身体が大丈夫でも、暑さに打ち勝つことは出来ない。
そんな状況を、乗り越えるしかない。
やっとの思いで、終業時間を告げるチャイムが…
「キーン、コーン、カーン、コーン」工場に鳴り響いていた。
木嶋は、【フー】と息を吐いた。
急いで小室さんの職場に向かった。
「小室さん、仕事は終わったの?」木嶋は、小室さんに問いかけていた。
小室さんは、
「木嶋…納入が間に合わず仕事が終わらなかった。」木嶋に告げた。
木嶋は、
「やっぱりね!」小室さんに伝えた。
小室さんは、
「何だよ!やっぱりとは…」
「先ほどの休憩時間の会話の中で…ヤバイようなことを言っていたからね。」木嶋は、小室さんに話していた。
小室さんは、
「そう感じたか?木嶋は、鋭いな!」木嶋の勘の良さに感心していたのであった。
木嶋は、
「今回は、仕方ないね。クラブ『U』には連絡を入れます。これから、永岡さんと富高さんに報告します。」小室さんに告げ、駆け足で、ロッカールームへ向かった。
ロッカールームに到着。
急いで着替えを始めた。
すると…富高さんが、木嶋の元に歩いて来た。
「木嶋君、慌てて着替えなくてもいいよ!」木嶋は、驚いていた。
木嶋は、
「何で…?」富高さんに尋ねていた。
富高さんは、
「ロッカールームに来る前に、永岡さんと会って、一本あとのバスに乗ることにしたよ。」木嶋に伝えた。
木嶋は、
「そうだったの?慌てて…損したよ。」富高さんに、苦笑いを浮かべていた。
富高さんは、
「小室さん、残業なの?」木嶋に聞いていた。
木嶋は、
「納入が間に合わないとかで、残業だよ!午後の休み時間に職場に出向いたとき…微妙な言い回しだったよ!」富高さんに告げた。
富高さんは、
「やはりね!」意味深な発言に終始していた。