第454話
「ピン、ポン、パン、ポン」社内放送の合図が入ったのだ。
木嶋は、耳を澄まし、放送を聞いていた。
「只今、台風は、速度を上げ…関東地方を通過中です。これから風雨が強くなります。外で作業をしている方は気をつけて下さい。夕方には、関東地方の東の海上に抜ける見込みです。」
会社が、気象関係で、社内放送をするのは珍しい。
木嶋は、
「何だ…早めに終業する話しかと、期待していたのに残念…。こればかりは、メーカーとの兼ね合いがあることだから厳しいな!」納得していた。
作業を始める準備をしていて矢先に…
「グラリ…」と、横に数秒間揺れたのだ。
【地震か…!】日本は、地震大国である。
いつ…何処で、揺れていても不思議ではない。』一人で呟く。
幸いにも、揺れたのは…一度だけであった。
どこの企業も、そうかも知れないが…外国人を雇用しているところは、日本中に、たくさんあると思う。
外国人の中では、地震を経験したことがない人も大勢いる!
いくら地震を経験をしていても、恐怖心を、一度…植えつけられてしまうと、怯えてしまうのである。
木嶋の職場には、外国人はいない。
「あとで、携帯のニュースを見よう。」作業を始めた。
三谷さんが、
「木嶋…どうしたんだ。浮かない顔をし…」木嶋に問いかけていた。
木嶋は、
「別に、何もないよ。」三谷さんに答えていた。
「キーン、コーン、カーン、コーン」午後の休憩時間のチャイムが鳴り響いていた。
木嶋は、大急ぎで小室さんの職場に向かった。
ようやく…小室さんの休憩所に辿り着いた。
「木嶋、どうしたんだ…息を切らせて…。」小室さんが、木嶋に尋ねていた。
木嶋は、
「昼休みに、小室さんの職場に来れずに申し訳ない。」すかさず…小室さんに、頭を下げ謝罪をした。
小室さんは、
「何だ…そのことなら心配することないよ。」木嶋に言葉を返した。
木嶋は、ようやく
息を整えて…
「昼休みが終わる直前に、地震がありましたが、予定通りに、クラブ『U』に行きます。小室さんも、それでいいですよね?」小室さんに聞いていた。
小室さんは、
「永岡さん、木嶋、富高が行くならいいよ。俺は、場所が判らないから、みんなについて行くのが精一杯だよ。」木嶋に告げたのであった。
木嶋は、
「そうですね。小室さん、《ドタキャン》だけは無いようにして下さいね。」小室さんに念押しした。
小室さんは、
「大丈夫だ。」木嶋を安心させるような発言をしたのであった。
木嶋も、午後の休み時間が終わりに近づき…大慌てで、自分の職場に戻って行った。