第448話
木嶋は、熱中すると、周りが見えなくなってしまうことがある。
【一人でいるのも、寂しく感じるが…バッティングセンターを、独占出来るいい機会。このまま、打ち込んでもいいかな!】
心にゆとりが生まれていた。
【良し…今度は、ストレートだ。】一人で呟いた。
変化球のバッターボックスから、ストレートのバッターボックスに移動。
金属バットも、各バッターボックスに置いてあるが、木嶋は、無意識のうちに持ってきてしまった。
木嶋は、普段から、金属バットを振りこなしていないせいなのか…
左の掌に、グリップエンドが当たっていて、擦れたあとがあった。
【いつも、木のバットしか使わないから、金属バットを使うと…やはりこうなってしまったか!】予想していたが、妙に納得してしまった。
ストレートのバッターボックスに入り、Gパンから財布を出した。
200円を取りだし、コイン投入口に入れた。
「キュイン、キュイン」アームが回っている音が聞こえる。
「良し…来たぞ。今度は、振り遅れないようにしないと…」
木嶋の脳裏には、先ほどの苦いイメージがついていた。
先ほどと違い、振り遅れないように、バットの始動を早くした。
「カキーン、カキーン」真芯に当たっていないが、打球は飛んでいる。
「もう少しだ。」
タイミングを合わせた。
「カキーン、カキーン」
打球が、真芯に当たり、伸びていくのがわかった。
ただ…気になっているのは、真上に上がっていないのだ。
「打球を上に上げないと…」悩んでいた。
調子が出て、段々(だんだん)と、身体が暖かくなってきた。
全球、打ち終えた。
腕時計で時間を確認した。
『もう…こんな時間なの?』驚いていた。
午後8時30分になっていた。
バッティングセンターにも、管理人がいる。
木嶋は、
「営業時間は、何時までですか?」管理人さんに尋ねた。
管理人さんは、
「午後9時までです。まだ、打ちますか?」木嶋に問いかけていた。
木嶋は、
「そろそろ帰ろうかと思っていますが…どうしてですか?」管理人さんに話していた。
管理人さんは、
「ここも、もうすぐ閉店なんです。」木嶋に答えていた。
木嶋は、
「えっ…閉店なんですか?」目を白黒させていた。
管理人さんは、
「そうなんですよ。この土地は、地主さんの意向(いこうなのです。」木嶋に答えていた。
木嶋は、
「地主さんの意向なら逆らえないよね。」管理人さんに伝えたのだ。
管理人さんは、
「1プレイをサービスしますが…打っていきませんか?」木嶋を誘った。
木嶋は、
「そんなことをしたら…赤字になってしまいますよ。」管理人さんを思いやっていた。
管理人さんは、
「地主の意向もあるので、構いませんよ。」木嶋に伝えた。
木嶋は、
「それでは、お言葉に甘えていいですか!」管理人さんに話したのだ。
管理人さんに、
「どの球種が、いいですか?」木嶋に問いかけていた。
木嶋は、リベンジの意味を含めて…
「変化球でお願いします。」管理人さんにたのんだのであった。