第419話
飲み会が、みんなの笑い声を出し、賑やかに場が進んでいた。
木嶋は、左手にしている腕時計で、盛んに時間を気にしている。
富高さんが、
「木嶋君、さっきから落ち着きがないけど…どうしたの?」木嶋に聞いていた。
木嶋は、
「はるかと待ち合わせがあるから、正直…どこで歯止めをかけようか考えているんだ!」富高さんに答えていた。
富高さんは、
「仕方ないよ。飲み会が盛り上がっているのに、水を差す発言は出来ないよ。」
木嶋は、頷いていた。
男性店員さんが、
「お待たせしました…生ビールの中ジョッキです。」大森さんに手渡した。
小室さんが、立ち上がり…
「え〜、これで全員役者が揃いました。ここで、再度…乾杯の音頭を取りたいと思います。グラスを持って頂いて…乾杯。」威勢の良い掛け声を出していた。
大森さんが、
「乾杯。」と、答えたのである。
いつもより…大森さんの飲むペースが早い。
出遅れを取り戻そうと必死になっている。
傍から見ると…無謀に見えてしまった。
木嶋は、同期会を幹事をしている。
不定期に…最寄り駅の『ホルモン屋』で開催している…。
同期の中でも、誰か…一人、遅れて来る。
駆け付け一杯。
また、一杯。
そんな感じである。
大森さんは、それと同じことだと思うのである。
「大森さん、大丈夫?」木嶋は、心配になり…大森さんに声を掛けた。
大森さんは、
「最初の一杯だけですよ。」木嶋に答えていた。
木嶋は、ホッ…と、胸を撫で下ろした。
三谷さんが、
「木嶋…たまには飲めよ!」木嶋に、いつも話す口癖である。
木嶋は、
「三谷さんこそ…飲んだ方がいいんじゃないの?」三谷さんに切り返していた。
三谷さんは、
「俺も、飲みに行く機会が…以前より少なくなったよ。」木嶋に話していた。
木嶋は、
「自分も、飲みに行く機会がないよ。」ボヤき気味に、三谷さんへ伝えた。
三谷さんは、
「富高さんや、小室さんたちと飲みに行っているんじゃないの?」木嶋に、ツッコミを入れていた。
木嶋は、
「富高さん、小室さんにしても、毎月、一緒に飲み歩いていないよ!」三谷さんに告げたのだ。
大森さんは、
「木嶋君、嘘を言ってはいけません。」右横から木嶋を諭していた。
木嶋は、
「大森さん、隠し事していないよ。」大森さんに話していた。
大森さんは、
「そうかな?」首を傾げていた。
永岡さんが、
「木嶋、何か…疚しい行動をしているのか?」矛先が木嶋に向いていた。
木嶋は、
「永岡さん、疚しいことなどしていませんよ。」永岡さんに答えていた。
小室さんが、
「永岡さん、木嶋は…飲み屋のお姉ちゃんに唆されているんですよ。」永岡さんに耳打ちしていた。
永岡さんは、
「やはり…そうか!どこの女だ。」木嶋に問いかけていた。
木嶋は、観念したのか…
「関内です。永岡さん、お言葉を返すようですが…女に唆されていません。」永岡さんに伝えた。
永岡さんは、瞬時に…木嶋の表情を見た。
「木嶋、顔に説得力がないぞ。」木嶋に尋ねていた。
木嶋は、
「永岡さんは、全て…お見通しでしたか?」そう答えるしかなかったのだ。