第402話
木嶋は、
「はるかは、当日…《ドタキャン》するのではないか?それが杞憂に終わればいいが…」自分の予感が当たるかは、まだ分からない。
はるかが、木嶋たちと一緒に、麻美の店に行くことを知っているのは、富高さんだけである。
他の人たちには教えていなかった。と言うよりも…はるかのことを教えていないのである。
小室さんは、以前…はるかが、クラブ『H』にアルバイトをしていたときに、木嶋に連れられて…2度ばかり顔を見ていたが、酔っ払っているので覚えている可能性は、限りなく薄い…
また、考え過ぎてしまうのも、精神的に参ってしまうので…
【明日、対策を考えよう。】結論を出したのだ。
翌日になり…
木嶋の揺れる心を象徴しているような怪しい雲行きである。
《一波乱ありそうな気配だな。》
このとき…木嶋は、現実になると思いもよらなかった。
地元の最寄り駅から電車に乗り、横浜駅で相鉄線に乗車し、会社の最寄り駅で降りた。
送迎バスに乗り、会社に到着した。
ロッカールームで着替え終えると…
いつもなら、この時間は、小室さんが着替えているはずなのに…着替えていないことに気がついた。
「小室さん、もう?現場に到着しているのか?遅れてくるのかな?」木嶋は、そんな感覚しかなかった。
小室さんの職場についたが、休憩所で煙草を吸っていた形跡がまるでない。
「まさか…今日は休みか?」木嶋の胸に不安が過ぎっていた。
「電話をしようかな?いや…待てよ!もう少し、待ってみよう。」思い留まっていた。
時刻は、午前7時40分であった。
木嶋は、自分の休憩所でスポニチを読んでいた。
工場内で、午前8時のチャイムが、
「キーン、コーン、カーン、コーン」鳴っていた。
「小室さん、今日は、会社に来ているよ。」一人で自問自答していた。
今日は、永岡さん、富高さん、三谷さんたちと仲間で飲み会なのだ。
主催者は、木嶋だが…幹事長は、小室さんである。
無論…小室さんがいないと、場が盛り上がらない。
誰にでも、盛り上げ役を出来る人は、なかなかいるものではない。
木嶋は、人を集めることは出来ても、女性たちや先輩方に話しを何から切り出していいのか?分からないときが往々(おうおう)してある。
大森さんは、
「会社の人たちと飲みに行くと…仕事の話ししか出ないから嫌だよ。」木嶋は、そう答えていたことがある。
会社の人たちと一緒にいると…話題がそちらに向いてしまうのは、仕方がないことなのだ。
会社のことばかりを話せば、場が盛り下がってしまうのは当然である。
木嶋が、飲みに誘うメンバーは、非常にバラエティー豊かである。
小室さんが、
「何だ?このメンバーは…。」最初に発した言葉である。
誘われた人から見ると…共通点がないように見える。
どこかに隠されている《キーワード》がある。
その《キーワード》を見つけるのは、その場にいる人たちなのだ。
木嶋だって…はるかと趣味が合うことがない。
はるかが、木嶋と一緒にいるのは、【居心地がいい】のである。
麻美や玲もいいが、普段から一緒にいる時間が長いのは、はるかや富高なのであった。