第397話
「コーヒーショップ『Y』に来るのは、これで…何回目になるのだろう?」ふとした疑問心を抱いていた。
はるかと、最初の待ち合わせは、コーヒーショップ『D』であった…
それ以降、カフェレストラン『F』、コーヒーショップ『Y』の3カ所を点々(てんてん)と回り歩いているのである。
どこの店も、何回も行っているので…メニューを見るたびに、在り来りなフードしか置いていない。
「さて…今日は、何分後に、はるかが、来るのだろう?」木嶋が、珍しくワクワクしている。
それだけ…気分が乗っている証拠である。
「お待たせしました。こちらは、メニューでございます。」男性店員さんが、木嶋にメニューを手渡した。
木嶋は、メニューを受け取り…パラパラとページをめくっていた。
「何か?新しいのを創作すればいいのに…。そんな気概を持っている人はこの店にはいないのか?」
日本人は、
【熱し易く冷めやすい】ので、努力を怠れば人が離れて行ってしまう。
木嶋が、コーヒーショップ『Y』オーダーするのは、スコーンセットか…ケーキセットが定番である。
はるかは、なるべく近所の人たちと会わないように工夫をしているらしい。
木嶋も、たまに…家族が横浜駅に出て来ることもあるので、時間が重ならないように配慮するのも大変な苦労なのである。
「オーダーをお願いします。」木嶋が、右手を挙げ、男性店員さんに声を掛けた。
男性店員さんが、木嶋のテーブルに歩いてきた。
「お待たせしました。ご注文をお伺い致します。」
「ミルクレープケーキセットで、飲み物は、ホットのアメリカンコーヒー。」男性店員さんに告げた。
男性店員さんは、
「ご注文は、以上でよろしいでしょうか?」木嶋に聞き返していた。
木嶋は、
「それでいいです。」男性店員さんに言葉を返した。
男性店員さんは、
「畏まりました。少々(しょうしょう)お待ち下さいませ。」木嶋のテーブルから離れて行った。
木嶋は、リュックの中から何かを探している。
リュックの中に入れているのは、折りたたみ傘と、着替えである。
後入れてあるのは、手帳である。
手帳には、その日に起きた出来事が書いてある。
大体が、新聞の記事を抜粋して、手帳に書き記している。
手帳にその日の出来事を書き始めたキッカケは、家や会社で文字や文章を書く機会がなくなり、漢字を書くのが下手になっていると実感していた。
家では、新聞を読むが…朝、駆け足で出て行くため、ゆっくりと読む機会がない。
家に帰ってきてから読んでいるので、話題にズレが出ている。
そんな状況が長く続いているので、帰るときも、夕刊紙を買うのが日課になってしまっていた。
リュックの中から文庫本を取り出した。
木嶋が、文庫本を出すのも久しぶりである。
あまり読まないので、ところどころに擦れたあとがあった。