第396話
毎日、夜遅くまで残業をしているので、はるかと会う約束をすると帰宅時間が遅くなって行く。
夜7時までの残業なら…1時間ぐらい、時間の余裕があるが…夜8時まで仕事をすると…会っている余裕がないのが現実である。
いつもの木嶋なら、はるかから…《会いたい》と【シグナル】を送られれば…《二つ返事》で喜んで会いに行くが、金銭的に、ゆとりがないときには会いたくないと気持ちの上で、【ブルーな気持ち】になることもある。
木嶋は、腕時計で時間を確認…
電車が、会社の最寄り駅を出てから、10分ぐらいが経過していた。
「自分が、横浜駅に到着するのは、午後8時頃だな!」一人で呟いていた。
携帯を手に取り…はるかにメールを送信しようと悩んでいた。
「横浜駅に着いてからメールをしようかな!」一つの結論が出たのである。
もうすぐ…乗り換え駅である。
ここからは、急行に乗って横浜駅に向かって行くのがベストな選択である。
急行と言っても…途中で《スピード》を緩めることもある。
それは、横浜駅のホームに入線するときに、電車が入るスペースがない。
一つ手前の駅で待機状態になる。
今朝みたいに、最寄り駅に到着する前に、人身事故が起きていたことは、何度かある。
木嶋は、長い間…電車通勤しているが、乗車していた電車が、大きな人身事故に巻き込まれたことは一度もない。
1995年頃…研修先で知り合った仲間と、カラオケやスキー、バーベキューなどを通じて…色んな人たちと交流を持っていたが、いつしか…それが途切れてしまった。
その仲間が、一度…横浜で飲み会があり、帰り道、変電所に落雷のあり、その影響で、信号が消えてしまい、途中駅で待ちぼうけになったこともあった。
今、思えば懐かしい出来事である。
そんな中で、はるかと出会ったことは、木嶋を悶々(もんもん)とした生活から脱出した。
その延長線上で、麻美や玲と出会う。
たまに、一人きりになりたいと思うときが…ある。
周りに《チヤホヤ》されるのが嬉しい人がいれば…その逆パターンも存在する。
家に居ても、姉がいるので、気を遣う。
姉には、それが判らない。何も自由にならない…もどかしさがあるのも事実である。
それが原因で喧嘩をすることがある。
はるかを拘束しようと思えば、いつでも出来る。
今は、自由気ままにした方が最善策だと信じていた。
「そりゃあ…はるかは、まだ、成人をしたばかり…。遊びたい盛りだ。いずれ…女友達が、一人、また一人と結婚をしていけば…状況が変わるはず。今は、石にかじり着いても耐えなければならない。」木嶋は、自分自身を納得させていた。
納得させるよりも、妥協するしかないのである。
もうすぐ横浜に到着する。
「何か…気が滅入るな!」重い足取りで、いつもの待ち合わせ場所に向かっていた。
はるかは、待ち合わせ場所を点々(てんてん)と変えるのが嫌いである。
木嶋も、横浜駅周辺に詳しくないので、変えると訳が分からずに《パニック状態》に陥りやすい。
待ち合わせ場所に着いた。
木嶋は、2Fに上がって行ったのである。