第393話
大森さんが、木嶋の職場に歩いてきた。
「木嶋君、小室さんの右膝の状態はどうなのかな?」木嶋に尋ねていた。
木嶋は、
「先ほど…小室さんと電話で話したのですが…あの後…痛い右膝を庇いながら家に帰ったみたいです。今日は、開業医は休みなので、土曜日にかかりつけの医者に行くと言っていました。明日は、どんなことがあっても来るそうです。」大森さんに答えていた。
大森さんは、
「何とか帰宅出来たんだね。それなら安心だね!明日は、《ドタキャン》はないだろうね?」疑心暗鬼になっていた。
木嶋も、完全に不安が払拭されたわけではない。
「大森さんが言うように、ドタキャンの可能性もあると思います。」
続けて…
「明日になれば…全て分かることですよ!」大森さんを説得していた。
大森さんも、
「そうだね!明日になれば判るよね!」首を縦に降り頷きながら、自分の作業エリアに戻って行った。
「今日は、残業だから…富高さんには、5時の休み時間に職場に行こう!」自分に言い聞かせていた。
夕方になり、木嶋は、富高さんの職場に急いで向かった。
周りを見渡し…
「富高さん…いますか!」職場の休憩所で座っている人に、富高さんが残業なのか尋ねていた。
「富高なら…定時間で上がったぞ!」同じ職場の人が木嶋に伝えた。
木嶋は、
「そうなんですか?」驚いた様子で答えていた。
ふと…腕時計を見ると…夕方の午後5時10分を過ぎたばかりである。
会社の送迎バスの発車時刻は、午後5時15分である。
時間に…まだ猶予がある。
「今から…ロッカールームに行けば、富高さんに会えるかも知れない!」足早に富高さんの職場を後にした。
ロッカールームに着いた木嶋は、汗を拭きながら富高さんを探していた。
「あっ…富高さん、探していたんですよ。」木嶋は、咳を切ったように…富高さんに話しかけた。
富高さんは、
「木嶋君…職場に出向かなくて申し訳ない。小室さんの状況は…」木嶋に問いかけていた。
木嶋は、
「小室さんと電話で話したのですが、地元の開業医は…どこも休みなので、土曜日にかかりつけの医者に行くと答えていました。明日は、会社に来ると断言していました。」富高さんに答えた。
富高さんは、
「明日、会社に来るなら問題ないね!木嶋君、状況が変わったら、また連絡下さい。」木嶋に話し、着替えを終えて…ロッカールームから出て行った。
木嶋も、慌てて職場に戻って行く!
仕事の始まりを告げる予鈴のチャイムが…
「キーン、コーン、カーン、コーン」鳴っていた。
「ヤバイ」と感じ…戻るスピードを上げていた。
職場に戻り三谷さんが、
「木嶋…どこに行っていたんだ!」口を尖らせて、木嶋に話しかけてきた。
木嶋は、
「富高さんの職場に行っていたよ!何か…あったの?」三谷さんに聞いていた。
三谷さんは、
「溝越さんが、木嶋を探していたんだ。」
「そうなの?何の用事だろう?」木嶋は、一抹の不安が過ぎっていた。
「生産のことかな?溝越さんの元に行ってきますよ!」木嶋は、三谷さんに答え、その場を離れて行った。