第388話
会社の最寄り駅で、小室さんと別れた木嶋は、小走りでタクシー乗り場に向かって行く…
「タクシーの台数に、余裕があるな!」ホッと胸を撫で下ろしていた。
タクシーを乗車する列の最後尾に並んだ。
木嶋を入れて…5人待っている。
前に並んでいたお客さんが、タクシーに乗車した。
次は木嶋の番である。
タクシーのドアが開き…
「どちらまでですか?」女性ドライバーさんが木嶋に聞いていた。
木嶋は、
「会社近くのコンビニ…『サンクス』までお願いします。」女性ドライバーさんに告げた。
女性ドライバーさんは、
「畏まりました。」木嶋に話し、賃走釦を押した。
最近…タクシー業界には、年配の方から若い女性まで、ドライバーが増え始めて運転しているらしい…
女性ドライバーに当たるのは、木嶋は、初めてであった…。
最寄り駅から会社までは歩くと…30分掛かる。
まだ残暑が厳しい季節に、朝から余分な体力の消耗は避けたい気持ちがある。
タクシーに乗れば…会社まで10分で到着するのだ。
会社の始業時間は、午前8時15分なので、時間的にまだ間に合う。
タクシーの女性ドライバーさんは、手慣れたハンドル捌きで車を走らせていた。
見慣れた景色が見えてきた。
会社近くのコンビニ…『サンクス』である。
「こちらでよろしいでしょうか?」木嶋に尋ねていた。
木嶋は、
「こちらでいいです。」女性ドライバーさんに答えた。
「運賃は…1250円になります。」
木嶋は、小室さんから預かったお金で支払いをした。
「2000円お預かりしましたので、750円のお返しです。領収書は要りますか?」女性ドライバーさんは、木嶋に問いかけていた。
木嶋は、一瞬躊躇しながらも…
「領収書を下さい!」女性ドライバーさんに答えた。
女性ドライバーさんは、素早く…領収書を機械から切り離し…木嶋に渡したのだ。
木嶋は、領収書を握りしめ…タクシーから降りた。
信号待ちをしているときに…
「ピッ…ピー」
バイクのクラクションが木嶋の耳に聞こえてきた。
「誰かな?」
振り向くと…大森さんであった。
「木嶋君、おはよう…タクシーで会社に来るなんて…珍しいよね?何か…あったの?」聞き慣れた声が聞こえていた。
「大森さん、朝からついていなくてね!会社に来るのが遅くないですか?」木嶋が、大森さんに尋ねていた。
大森さんは、
「今日は、家を出るのに出遅れてしまってね…」木嶋に伝えた。
木嶋は、
「出遅れたなんて…随分穏やかではないね!」大森さんに、言葉を返していた。
大森さんは、
「そんなことは、後で話しますよ!信号が青になっているので渡らないと…」木嶋に切り返していた。
木嶋は、横断歩道を渡り、会社の正門を通った。
「木嶋、遅いじゃねえか…」守衛の池松さんが、木嶋に声を掛けた。
木嶋は、
「今日は、朝から散々(さんざん)ですよ。」池松さんに答えた。
池松さんは、
「そうらしいな!」状況把握をしていた。
「ツイていないときは、ケガをしやすいから気をつけてな!」木嶋に伝えた。
木嶋は、
「ありがとう」と、言葉を返し、ロッカールームに向かって行ったのであった。