第376話
ビックカメラで、スチームアイロンを購入した木嶋は、店の外に出て、はるかとの待ち合わせ場所に向かった。
「やれやれ…」ため息をつきながら…橋を渡る。
木嶋の脚が、ゲームセンターの前で立ち止まった。
「ゲームセンターか…最近、出入りしていないな!中に入ってプレイをしようかな!」
木嶋が、ゲームセンターに入るのも珍しい。
まだ、夜間高校に通っていたとき…
クラスメートや後輩達と帰り道に寄ったことがあった。
自分自身では、かなりの腕前だと自負をしていたが
いざ…遊んでみると…全員が、自分よりも、上手いことに気づいたのだ。
いかにして…驕りがあったのか…思い知らされたのである。
それ以来…トラウマになり、ゲームセンターに立ち寄らなくなってしまった。
「今の流行りのゲームは何だろう?」木嶋は、階段を駆け上がった。
《クレーンゲーム》、《対戦型ゲーム》、《一昔前のゲーム》の3種類に分類出来る。
《一昔前のゲーム》は…
【インベーダーゲーム】、【ゼビウス】、【ギャラガ】、【ギャラクシアン】、【パックマン】、【ドンキーゴング】などがある。
その中で、木嶋が良く得意としていたゲームは、【ギャラガ】である。
家にあるファミコンゲームのソフトも所持していた。
最高で、25面までプレイをしたことが記憶に残っている。
そのあとに発売されたゲームは、段々(だんだん)と複雑化していて、敬遠していた。
【インベーダーゲーム】が置いてあった。
たまには、やってみよう。
財布から1000円札を取り出した。
【1プレイ…100円】
コイン投入口にシールで貼ってあった。
「小学生の頃は、50円だったのに…」
頭の中の思い出が、少しずつ鮮明になってきた。
学校から帰宅して、自分の小遣いを握りしめ…
当時は、喫茶店が家の近くにあったのだ。
そこの【インベーダーゲーム】をやりたくて、順番待ちをしたこともある。
また、ボウリング場の2Fにゲームコーナーとバッティングセンターがあり、バッティングセンターで汗をかいたあとに、ゲームをしたこともあった。
熱くなってしまうと…もっとやりたくなってしまう…。
はるかとの約束があるので、ほどほどにしようと思っていた。
いざ…やり始めると、昔の感覚に戻らない。
腕時計で時間を確認すると…30分が経過していた。
「コーヒーショップ『Y』に向かおう。」木嶋は、ゲームセンターをあとにした。
ゲームセンターから、コーヒーショップ『Y』までは、目と鼻の先である。
コーヒーショップ『Y』の2Fに上がった。
「いつも…この店にくるたびに、虚しくなる。新しい場所を考えないと…。」そう考えていた。
「どこかに、コーヒーショップはないかな?」
【スターバックスコーヒー】、【タリーズコーヒー】などは横浜駅周辺にはない。
横浜駅周辺にあるのは、【ドトールコーヒー】しかない。
「はるかに、ドトールコーヒーでもいいか?聞いてみよう。」木嶋は、はるかに会ったら尋ねることを決めたのだ。