第362話
木嶋は、
「このビルです。」右手で合図をした。
「結構…高い建物だな!」永岡さんは、最上階を見上げた。
木嶋の住んでいる所よりも…遥かに高い。
駅前の一等地に、そびえ立っている。
木嶋が、まだ小学生の頃…駅前は、地下道があり…暗い灰色イメージがあった。
駅ビルの増築改装を手始めに…地下街がオープン。
それと平行するように…戦後に建てられた雑居ビルが、次々(つぎつぎ)と解体…建て直して行く。
映画館も…単独で林立していたが、時代の波を押されて消え…
その跡地に出来たのが…【シネマコンプレックス】である。
【シネマコンプレックス】は、流行りの映画を多数上映するようになり…
東京や横浜に流れていた…人の波が、少しずつ戻ってきたのである。
バブル経済の隆盛と共に…百貨店がオープンして行く。
そして…バブル経済の崩壊と同時に日本経済も転落…波乱に満ちていた。
永岡さんが、ここにいたときは、バブル経済の真っ只中だったのだ。
バブル経済当時の先入観で見入ってしまうと…
《カルチャーショック》に掛かってしまう。
木嶋は、
「永岡さん、立ち止まっていないで行きますよ!」永岡さんをエスコートしたのである。
永岡さんが、木嶋のあとを歩いていた。
木嶋は、エレベーターのボタンを押した。
「木嶋、飲む場所は、何階だ…」永岡さんが、木嶋に問いかけた。
木嶋は、
「このビルの22階になります。」永岡さんに伝えた。
永岡さんは、
「このビルの最上階は、22階なのか?」木嶋に尋ねていた。
木嶋は、
「そうです…最上階は、22階になります。」永岡さんに答えたのだ。
永岡さんは、
「その一つ下の階でもいいぞ!」木嶋に伝えた。
木嶋は、
「一つ下の階は…焼肉屋ですよ。焼肉よりも、食べ物の種類が多い…居酒屋の方がいいと思います!」永岡さんに答えた。
「木嶋のオススメならいいぞ!」永岡さんは、木嶋に声を掛けたのだ。
木嶋は、
「満足して頂けると、自分は考えています。」永岡さんに話したのだ。
エレベーターに乗り…22階のボタンを押した。
他の人もいた。
誰かが…21階のボタンを押した。
木嶋は、周りを見渡した。
「人数は、20人くらいですね!」永岡さんに伝えた。
エレベーターが、21階に到着。
意外にも…降りる人数が少なかった。
エレベーターのドアが閉まり…
「木嶋、残った人たちは、最上階ではないか?」永岡さんが驚いた様子で、木嶋に聞いていた。
木嶋は、
「そうみたいですね。」永岡さんに答えたのだ。
永岡さんは、
「そんなに…たくさんの人たちが入れるのか?」不安な表情を見せたのだ。
「永岡さんが、店の中に入れば分かりますよ。」木嶋は、永岡さんに伝えた。
エレベーターが、22階に到着した。
女性店員さんが…
「いらっしゃいませ」と声を揃えて…頭を下げた。
その横にいた男性店員さんが…
「予約をされているお客様は、こちらにどうぞ…」右手を上げて…お客さんを誘導したのであった。