第347話
はるかが、
「何か…買いたい!買ってもいい?」と、木嶋にねだる…。
木嶋は、眉間にシワを寄せ、頭の中の《コンピューター》で財政事情を考慮して決めていた。
今まで…はるかの誕生日プレゼントの中で、高価な物は…《何だろう?》と考えてみた。
多分…
ブランド『HERMES』のトートバックである。
『HERMES』、『LOUIS VUITTON』、『TIFFANY』、『COACH』、『BVLGARI』など、女性が憧れて持ちたいブランドが、数多く存在している。
その中で、木嶋が知っているブランドは…
『HERMES』、『LOUIS VUITTON』だと思っていた。
また、木嶋自身が、男のブランドに、全くと言っていい程興味が湧かない。
仕事は、現場のライン作業。
通勤での服装は、至ってシンプルだ…。
木嶋には、姉がいる。
良く…何か高価な物を買って持ち帰るたびに…
「また…買ってきたの?」ボヤきを入れていた。
木嶋が、女性のブランドに興味を持ち…
「姉ちゃん…何のブランドを買ってきたの?」と聞いたら…
「何で…そんなことを聞くの?」と、ツッコまれてしまう。
恐らく…反論も出来ずに終わってしまう。
わざと…興味がない…《ふり》をするのも大変である。
木嶋には、はるかと一緒にいる時間が大切だと思っていた。
コーヒーショップ『Y』に着いてから…10分が経過していた。
はるかが、待ち合わせ場所に、時間通り来ることは…
「まだ…来ないのか!」段々(だんだん)気持ちが萎えかけている。
限りなく…《0%》に近い。
待ち合わせ時間通りに来たら…はるかが来たら…
「天変地異の前触れと…」思わざる得ないではないだろうか…。
「待つと言った以上…待たないといけないな!」気持ちを切り替えていた。
木嶋は、右手で、Gパンのポケットから携帯を取り出し…
「はるかに…電話をしよう!」と思いつつも迷っていた。
「逆ギレされるよりも、電話をしない方がマシかな…」右手に持っていた携帯をGパンのポケットに再び…しまった。
日本経済新聞を広げようとしたとき…
先ほど…オーダーした
《シフォンケーキとアイスコーヒー》を、男性店員さんが、木嶋のテーブルに持ってきた。
「お待たせしました…シフォンケーキとアイスコーヒーです。」男性店員さんが、木嶋の座っているテーブルの上に置いた。
木嶋は、ガムシロとポーションミルクを入れた。
シフォンケーキを一口食べはじめ…日本経済新聞を広げた。
普段…読み慣れていないせいなのか?
目がチカチカしていた。
「日本経済も…何だか…フラフラしているな!」
木嶋が、そう思うのも無理はない。
日本経済は、バブル経済が崩壊してから…低成長しか続けていない。
今、木嶋の勤務している会社は、赤字であった。
そのため…ボーナスも、年々(ねんねん)下り坂になっている。
【はるかの買いたい物を買えるだろうか?】疑問心があるのであった。