第327話
木嶋は、横浜駅に到着した。
「普段から見慣れているのに、この違和感を感じるのは、なぜだろう?」
「最近、素通りしているからなのだろうか?」ポツリと呟いた。
無理もない話しである。
木嶋には、はるか以外の女性と付き合うのは、考えたことなど一度もない。
麻美や玲に、会うとしても、《プライベート》を含めても、両手で数えるぐらいしかいない。
全員に共通していることは、夜の仕事をしているか?辞めた人ばかりである。
木嶋の当初の人生計画は…今ごろ…
「結婚して、お嫁さんも、子供もいる生活をしていたはずなのだ。その歯車が、何かの…弾みで、狂いが生じてしまったのは…いつなのだろう?と」木嶋は、考え込んでしまった。
周りにいる先輩たちの多くは、結婚をしていない人たちばかり…。
最も…会社に女性社員が少ないことも上げられるが、人を紹介をして戴く機会に恵まれていないのが現実である。
自分から、今の現状を打破する…パワーを出さなければいけなかった。
はるかと、一緒にいるたびに…結婚したいと言う願望が出てしまう。
木嶋は、20代の頃に、婚活をしたことがある。
ただ、自分が、相手に必要以上に、何かを求めてしまっている。
寄り好みをしているとは思っていない。
周りから見ると、そう見られているのだ。
会社の中で選ぶなら、富士松さんしか…いない。
木嶋は、携帯を取り出し…はるかに電話した。
「プルッ、プルー、プルー」鳴り響いていた。
「もしもし…はるかですが…」はるかが電話に出た。
「木嶋です。今、横浜駅に着きました。待ち合わせ場所は、どこにしますか?」木嶋は、はるかに尋ねていた。
はるかは、
「そうですね〜いつものコーヒーショップと…言いたいのですが…焼鳥屋に行きたいです。」木嶋に話した。
木嶋は、
「えっ…焼鳥屋ですか?随分、珍しいことを言いますね。」一瞬…言葉が出なかった。
続けて…
「どこかにあったような…気がしますが…!」はるかに答えた。
はるかは、
「地下のお店があるところは、木嶋さん…解りますか?」木嶋に問いかけていた。
木嶋は、
「何となく…判りますよ。」はるかに伝えた。
はるかは、
「そこに、焼鳥屋があるので、先に入っていて下さい!」木嶋に話したのだ。
木嶋は、
「分かりました。先に入っています!」はるかに伝え、電話を切ったのだ。
はるかと待ち合わせすると…木嶋が待つのが多い。
待ちくたびれて…帰ってしまうこともある。
酷いときは、2時間…待ったこともある。
「今日は、何分…待たされるのだろう?」期待と不安が…入り混じっていた。
はるかに言われた通り…地下のお店がある場所に来た。
ここは、人通りも、【マズマズ】である。
「焼鳥屋は、どこにあるのだろう?」
木嶋は、通りを探した。
すると…角に 、焼鳥屋があったのだ。
「はるかは、良く…店を知っているな…」半ば…感心をしていた。
暖簾を潜り…
「いらっしゃいませ…」威勢のよい声が、店内を《コダマ》していた。
「お客様は、1名で、よろしいでしょうか?」若い女性スタッフが、木嶋に聞いていた。
木嶋は、
「あとから、1名来るので…2名でお願いします。」若い女性スタッフに伝えた。
若い女性スタッフは、
「畏まりました。ご案内します。」木嶋を座席に、エスコートした。
木嶋は、座席に座り、メニューを手に取った。
携帯が、再び、鳴り出したのであった。