第326話
富高さんは、
「このまま…麻美さんのペースに、【ズルズル】と流れて行きそうな《雰囲気》が漂っているので、どこかで断ち切らないと…ダメだよね。」
木嶋も、
「そうだよね!」富高さんの答えに、同意するしか答えがなかったのだ。
一人でいると…
バスの車内から町並みの景色を見ている。
時には、携帯のモバイルゲームに没頭してしまう。
その分…到着時間まで、長く感じてしまう。
「アッ…と」言う間に送迎バスが、最寄り駅へ到着した。
木嶋のいる会社は、外国人の期間従業員が多い。
木嶋と、富高さんは、珍しく…
並行歩行しながら階段を下りていく。
コンコースに下り立った。
富高さんは、
「木嶋君、また明日ね!」木嶋に伝え、横浜市営地下鉄の乗り場に歩き出していた。
木嶋は、一人にキリになり…
《ポツン》と我を忘れるくらいに、深刻な表情を見せながら歩いていた。
「富高さんが、話していることは、正論である。」内心、木嶋が、思っていたことを代弁していたので、妙に浮ついた気持ちでなく、すんなりと納得が出来たのだ。
相鉄線の改札を通り、いつもと同じ、右側の階段を下りていく。
「プルー」と鳴り響く…発車ベルの音。
地下ホームは、音が反響しやすいのである。
慌てて…電車に飛び乗った。
「ガタン、ゴトン」
揺り篭のように、揺られていた。
木嶋は、疲れていたのか…電車の中で眠ってしまった。
普段は、朝の電車の中で寝ることはあっても、帰りの電車の中で寝ることはない。
稀に…同期会や歓送迎会で飲んで帰ったときは、酔いからなのか…眠気を誘うのだ。
車内アナウンスが…
「間もなく…乗り換え駅です。」
木嶋は、
「ハッ…と」我に帰った。
「乗り換え駅まで、気が付かなかったのか…長い時間…寝ていたんだな!」ボヤいていた。
乗り換え駅で、急行電車に乗車。
空いていた座席を見渡し…3人掛けのシートが空いていた。
先ほどまで…寝ていたせいか?
眠気が無くなっていた。
リュックから夕刊紙を取り出し、読もうとしたとき…
木嶋の携帯が…
「ピローン、ピローン、ピローン」鳴っていた。
この着信音は、はるかからである。
木嶋は、迷っていた。
「電車の中だし…どうしようか?」
携帯の着信音は、まだ、鳴っている。
50秒ぐらい…経過して鳴り止んだ。
間髪入れずに再び、着信音が…
「ピローン、ピローン、ピローン」鳴っていた。
木嶋が電話に出た。
「もしもし…木嶋ですが!」
「はるかです。木嶋さん、今…どちらですか?」はるかは、木嶋に尋ねた。
木嶋は、
「今、乗り換え駅を出たところです。」はるかに答えた。
はるかは、
「私は、横浜にいるので、待っていていいですか?」木嶋に問いかけていた。
木嶋は、
「うん。いいよ!横浜で待っていてね!あとで、待ち合わせ場所を決めましょう。」はるかに伝えた。
はるかは、
「分かりました。木嶋さん、横浜に着いたら連絡を下さい!」木嶋に話し、電話を切ったのだ。
木嶋は、
「タイミングがいいのか?悪いのか?判断が難しい…麻美さんのこともあるから…良かったのかな?」そう感じつつも…
「はるかと会うのも…随分…インターバルが開いたかな?」ボヤきながらも…
はるかに会えると思うと、何故か?心に、ゆとりを持つようになっていた。