第319話
女性スタッフが、首を縦に振り…麻美の元を離れて行った。
麻美は、
「木嶋君、今、オーダーしたからね!」木嶋に伝え、
木嶋は、
「ありがとうございます!」麻美に告げた。
クラブ『U』の壁に掛けてある時計を見つめた。
「午後10時30分を回ったばかり…か?」小さな声で囁いた。
麻美は、
「木嶋君…どうしたの?」木嶋に声を掛けた。
木嶋は、
「そろそろ…富高さんの終電時間が気になってね!」麻美に伝えた。
「あっ…そうだね。富高さん、この中で、帰る距離が長いんだよね!今も、千葉の船橋から通勤しているんだよね!木嶋君、どうしようか?」麻美が、顔を曇らせ…木嶋に聞いていた。
木嶋は、
「どうするかは、富高さんの判断に委ねます。前回、ここに来たときは、会社の先輩の家にお世話になったから…出来るだけ、電車のある時間に帰りたいのが本音だね!」麻美に答えていた。
麻美は、
「私が、富高さんに聞いてみようか…」木嶋に話し、
「富高さん…」富高さんを呼びかけていた。
富高さんが、麻美の方に、顔を上げた。
「何でしょう…?」麻美に尋ねていた。
「木嶋君が、帰る時間を心配しているよ。」麻美が、富高さんに聞いていた。
その左横にいた…ちさとさんが…
「もう…帰ってしまうのですか?」富高さんに、問いかけていた。
富高さんは、
「自分は、通勤で、時間が掛かるのですよ!」ちさとさんに告げた。
ちさとさんは、
「どちらから、通勤しているのですか?」富高さんに尋ねていた。
富高さんは、
「千葉の船橋から通勤しています!」ちさとさんに答えた。
ちさとさんは、
「千葉の船橋ですか?随分…遠くから通っているのですね!通勤で、苦になりませんか?」富高さんに聞いていた。
富高さんは、
「会社の事業所が…あと、2カ所あり、栃木まで通勤していた時期もあったので、そんなに苦にはならないよ!」ちさとさんに答えたのだ。
ちさとさんは、
「え〜、栃木まで通っていたのですか?栃木のどちらですか?」富高さんに尋ねていた。
富高さんは、
「栃木の鹿沼です!」ちさとさんに伝えた。
「鹿沼…ですか?何も、イメージが思い浮かびません!何か…ありますか?」ちさとさんが、富高さんに問いかけている。
富高さんは、
「何が、名産品か?気にしたことないね!あとは、木嶋君の最寄り駅からも通勤していたよ!」ちさとさんに答えたのだ。
ちさとさんは、木嶋の方に顔を向け…
「木嶋さんは、どちらにお住まいですか?」質問をしていた。
「鶴見ですよ!」木嶋は、ちさとさんに伝えた。
麻美が、木嶋の横で、ウス笑いを浮かべた。
木嶋の最寄り駅は、もう一つ…先の駅であった。
それは、麻美も分かっていた。
ちさとさんは、
「鶴見ですか?鶴見って…何か…《インパクト》があるものがありますか?」木嶋に尋ねていた。
この局面を打開するには、
【ゴマカス】しか出来ない…。
木嶋は、
「何もないね!敢えてあげるなら、西友があるくらいですよ。」無難な答えに終始した。
あとから、《ボロ》が出てしまう前に、クラブ『U』から退散しなければ…。
地元の駅なら、スラスラ答えることが出来ると思わずにいられなかった。
ただ、全く土地勘がなかった訳でもない。
一時期…木嶋は、夜間高校の後輩と交際していた。
その後輩は、鶴見に住んでいて…咄嗟に出てしまったのだ。