第312話
木嶋と富高さんは、京浜東北線の先頭車両に乗り、反対側のドア付近に立っていた。
関内は、横浜から2(ふた)駅であり、降りるホームは、反対である。
所要時間は、およそ5分である。
「木嶋君、ようやく…横浜駅を出たね!」富高さんが、木嶋に話していた。
木嶋は、
「そうだね!やっと…中間地点って感じだね!」富高さんに伝えた。
それもそのはずである。
会社から麻美のいるクラブ『U』までは、1時間を目安にしていた。
ここまで、読み通りの展開である。
まだ、先があるかと考えると…
「フー」と、ため息が出てしまう。
「木嶋君、クラブ『U』への道のりは…大丈夫だよね?」富高さんが、木嶋に問いかけていた。
木嶋は、
「微かに…記憶がある大丈夫…じゃないかな?」いつも…言葉に力強さが感じられるが、弱気な発言が気になっていた。
富高さんが、珍しく…
「木嶋君、大丈夫?」と尋ねていた。
木嶋は、
「なんとかなるさ…」
「間もなく…関内、関内です。」車内アナウンスが聞こえてきた。
「いや〜参ったね。慌てて電車に乗ったから、横浜スタジアムに行く感覚だよ!関内では、先頭から最後尾まで歩かないと…」木嶋は、富高さんに苦笑いをして答えていた。
富高さんは、
「まっ…こういうこともあるでしょう!仕方ないよ!飲みに行くのに、多少運動をしないと、お腹も空かないよ!」木嶋に話していた。
電車が関内駅に着いた。
「プシュー」ドアが開いた。
ホームのアナウンスが…
「関内…関内です!」聞こえていた。
木嶋と富高さんは、ホームに立ち、最後尾に向かって歩き始めた。
「富高さん、歩かせて申し訳ない!」
自虐気味に、頭を下げ…歩きながら話していた。
階段を下り、木嶋は、自動精算機に定期券を入れた。
《2(ふた)区間だから…130円。》
Gパンのポケットから財布を取り出した。
富高さんのキップは、木嶋が、会社の最寄り駅のキップ売り場で購入したので、精算をする必要がない。
木嶋は、趣味で、馬券を購入するので、桜木町駅までは、一人で来ることがある。
会社の同僚に頼まれてくることも、一年間で数回であった。
富高さんは、プロ野球観戦も、木嶋と一緒に来るのだ。
精算を終え…
「富高さん、お待たせしました。」木嶋が、富高さんに声を掛けた。
富高さんは、
「改札を出よう!」
改札口を出た。
「富高さん、こちらですよ!」
木嶋が、エスコートした。
目の前に大きな交差点。
「富高さん、何を食べますか?」木嶋は、富高さんに問いかけていた。
富高さんは、
「木嶋君は、何がいいの?」木嶋に聞いていた。
居酒屋もいいが、入れば短時間で出てくることが出来ない。
木嶋は、周りを見渡し…時間的なことを考慮すると…
「ラーメンか…牛丼か…ファーストフードか…正直…悩むね!」
選択肢は、3つだ。
「富高さん…どうします?」木嶋は、富高さんに尋ねた。
富高さんは、
「自分は、ファーストフード以外なら…どちらでもいいよ!」木嶋に伝えた。
木嶋は、
「ラーメンにしますか?ビールを飲みながら食べましょう…。」富高さんに答えたのだ。
富高さんは、
「そうしようよ!ラーメンとくれば、餃子もオーダーしないと…」木嶋に話したのだ。
木嶋は、
「炒飯もオーダーすれば、中華の王道だ!」富高さんに伝え、ラーメン店の暖簾を潜ったのであった。