第307話
大熊さんは、
「木嶋、心配するな!自分たちが、ノートに履歴を残してあるから…それを参考にして…企画、立案を進めていけばいいよ!」
木嶋の右肩を…
【ポン】と、叩きながら話したのだ。
木嶋は、
「大熊さん、ありがとうございます。それを参考にさせて頂きます。」大熊さんに答えたのだ。
大熊さんは、
「何か、行き詰まりを感じたら、迷わず相談して…協力するから…」木嶋に伝え、
木嶋は、
「そのときは、よろしく!」大熊さんに頭を下げ、その場を離れて行く。
木嶋は、歩きながら呟いた。
「ノートに、履歴があると言っても、本当に、参考になるのかな?」不安ばかりが募ってしまう。
その不安が、引き継いで…ノートを開いた瞬間に、愕然とするなんて思わなかった。
文体メンバーの選考が終わり、あとは、来月の顔合わせを待つだけである。
木嶋は、大貫さんの職場に出向いていた。
「大貫さん、あと1名って…誰ですか?」大貫さんに問いかけていた。
大貫さんは、
「自分の職場で、最終工程にいる…上田原だ。まだ、仕事をしているから、どんな人間か…挨拶をして来たらどうだ!」木嶋に伝えた。
木嶋は、
「ありがとうございます。自分も、若い社員の人たちは知らないので、話しかけてみます!大貫さん、良いですか?」大貫さんに尋ねていた。
大貫さんは、
「いいよ!」木嶋に答えた。
木嶋は、ラインの流れに沿い、上田原さんがいる…最終工程に歩いていた。
「木嶋さん…どうしたのですか?」藤川さんが、キャリーを押し…木嶋に声を掛けた。
藤川さんは、部品を、外へ取りに出かけて戻ってきた。
木嶋は、
「あっ…藤川さん、上田原さんは、まだ…仕事をしているの?」藤川さんに問いかけていた。
藤川さんは、
「うん。まだ、仕事をしていますよ。自分も、まだ…仕事が終わってませんよ!」木嶋に話したのだ。
木嶋は、
「藤川さんが、キャリーに部品を乗せているのだからそうだよね!」藤川さんに答えたのだ。
藤川さんと、木嶋は、5年前に、東京、立川にある津田塾の学園祭に出かけたことがあった。
一度くらいは、学園祭に行ってみたいと言う…藤川さんの希望を、木嶋が叶えたのである。
津田塾は、女子大学なので、華やかな雰囲気が出ていた。
大学の学園祭と、夜間高校の文化祭とは、規模が違う。
夜間高校の文化祭は、食べる物が主体である。
食べる物も、各学年で同じ物を出品しているため、一局集中をしてしまう。
大学の学園祭は、各学部などで趣向を凝らしたものが、たくさん出店しているので、選択肢がありすぎて、どこから見ればいいか…選ぶのも迷ってしまう。
若かかりしの出来事である。
大貫さんの職場には、藤川さんや、上田原さんなど若い年齢層が多い。
木嶋は、それが羨ましかった…
「溝越さん、自分たちの職場にも、若い社員を配属して戴けるように、相談をしてみてはどうでしょうか?」溝越さんに、木嶋は意見をした。
溝越さんは、
「木嶋、若い社員を入れたい気持ちは分かるが、今の生産量では無理がある。増加すれば…事務所も考えると思うが、今は難しい…理解をしてほしい。」木嶋に答えたのだ。
木嶋は、
「分かりました。」と、溝越さんに伝えていた。
我に返り…上田原さんの作業しているエリアに着いた。
「木嶋さん、こちらが上田原です。」
木嶋は、
「今どきの若手だね!」これが、上田原さんとの初対面であった。