第296話
木嶋を乗せた電車が、乗り換え駅に着いた。
小走りしながら、急行に乗り換えた。
「ここまで来れば、あと10分ぐらいで着くかな?」期待感を持っていた。
はるかとは、随分、会っていない日があるなと感じていた。
木嶋は、空いていた座席に座り、背負っていたリュックを降ろし、リュックから黄色い手帳を取り出した。
「はるかと会ったのは…いつ以来だろう?」
《パラパラ》と、一週間分の予定表を、一枚ずつ戻しながら、確認していた。
「ラストインから2週間振りか…?」
木嶋には、2週間と言う時間の長さが、凄く気になっていた。
一日、24時間なのだから、その10倍プラス24時間を4日を足さないと数字が出ないのであった。
その間、ポッカリと心の穴を埋めたのは、どんなことをしていたのだろう?
本屋で立ち読みをした回数が多かったかも知れない。
麻美は、
「木嶋君、別れなさいよ!」何度となく、警告を知らせるメールが来ていた。
木嶋も、我慢比べだと思う。
黄色い手帳をリュックに入れた。
電車が、横浜駅に着いた。
「やっと…横浜に来たか?」
毎日、横浜駅で乗り換えているが、さすがに、はるかと会うとなると…一段とテンションが上がる。
富高さんは、横浜や関内で飲むのが苦手である。
横浜、関内=コストが高い。
木嶋も、同じだ。 携帯を取り、はるかの電話番号をスクロールした。
「プッ、プッ、プッ、プルー」呼び出し音が鳴っている。
なかなか…はるかが電話に出ない。
買い物に出かけていると、電話に出ないことがある。
それが、洋服を試着していると、尚更だ。
20秒鳴らし続けても、電話に出ない。
「はるかとの待ち合わせ場所に行こう!」
木嶋は、コーヒーショップ『Y』に向かった。
いつものように、ドアが開き、階段で2Fに上がる。
週末の金曜日なので、人が多くいる。
木嶋は、周りを見渡し、空いている座席を探していた。
今日に限って、柱の近くの席しかなかった。
「たまには、気分転換で、そこの席にしよう!」
リュックを置いた。
「いらっしゃいませ!」男性店員さんが、木嶋に声を掛けた。
木嶋は、
「あとから…1名来ますので2名でお願いします!」男性店員さんに答えていた。
男性店員さんは、
「畏まりました。」メニューを木嶋に渡し、席を離れて行った。
いつもと変わらず…メニューをめくっていた。
「ホットのアメリカンコーヒーとケーキセットにしよう!」これが、木嶋の定番である。
すかさず…右手を上げ、男性店員さんを呼んだ。
「ケーキセットでお願いします。」木嶋は、男性店員さんに伝えた。
男性店員さんは、
「飲み物は?」木嶋に尋ね…
木嶋は、
「ホットのアメリカンコーヒーでお願いします!」男性店員さんに伝えた。
男性店員さんは、
「少々…お待ち下さい。」木嶋に話し、離れて行く!
木嶋は、リュックから夕刊紙を取り出した。
「新聞を読むのが、日課になりすぎていて怖いな!何を変えないと…」自嘲気味にボヤいていた。
「そう言えば…何か…資格を取得しないと…」
どうしようかと…考えあぐねていた。
「今、何が必要なのか?先行きが不透明で読みづらい!色んな人の話しを聞いてみよう!」
木嶋は、携帯を右手に持ち、メモリーダイヤルから、誰に電話をしようかと悩んでいた。
聞き慣れた着信音が、
「ピローン、ピローン、ピローン」鳴り響いていた。
木嶋は、電話に出た。
「もしもし…木嶋ですが…」
「はるかです。木嶋さんが、今、横浜にいますか?」はるかが、木嶋に問いかけていた。
木嶋は、
「今、待ち合わせ場所にいますよ!」はるかに答えていた。
はるかは、
「分かりました。これから、向かいますね!」木嶋に伝え、電話を切った。