第294話
富高さんたちと、麻美のクラブ『U』で、一緒に飲み騒いでから一週間が過ぎようとしていた。
木嶋は、相変わらず…はるかと会うのを、心待ちにしている。
【こんな生活が、いつまで続くのだろうか?】気持ちとは裏腹に、分かり予ていた。
麻美は、時間を見つけ…電話をするたびに…
「木嶋君、いい加減に…はるかさんから離れた方がいいよ!それが、ベストな選択だと思うよ!」盛んに、忠告をしている。
【馬の耳に念仏】と言う諺があるが、今の木嶋は、正しく…その状況に陥っていると言っても過言ではなかった。
毎朝、スポニチを【KIOSK】で購入して、電車の中で読み、会社で、一日の仕事を終え、ロッカールームで、私服に着替えている…。
何の変化もない…
いつもと変わらない毎日…。
携帯を見つめ…
《フー》と、ため息が漏れてしまう。
携帯が、
「ピローン、ピローン、ピローン」けたたましく鳴り響いていた。
この着信音は、はるかである。
着信を待ち焦がれていた木嶋は、着替えていた手を止め、電話に出た。
「もしもし、木嶋ですが…」
「私、はるかです!木嶋さん、今…どちらですが?」はるかが、木嶋に尋ねていた。
木嶋は、
「今、会社のロッカールームで着替えをしているところです。」はるかに伝えた。
はるかは、
「私、今…横浜にいるのですが…木嶋さん、今日…時間を取ることが出来ますか?久しぶりに会いたいです。」木嶋に問いかけていた。
木嶋は、戸惑いながらも、
「うん。いいよ。最近、はるかさんの顔を見ていないからね!会社からだと…1時間ぐらいかかります。待つことが出来ますか?」はるかに聞いていた。
はるかは、
「うん。いいですよ!高島屋とかで…《ウィンドウショッピング》をしていますね!横浜に着いたら連絡をくれますか?」電話をして戴けるように…木嶋に話していた。
木嶋は、
「分かりました。横浜に着いたら連絡をします。そのときに、待ち合わせ場所を決めましょう?」はるかに話し、電話を切ったのだ。
着替えを素早く終えた。
その動作は、いつになく軽快である。
周りにいる人たちが、不思議そうな表情で、木嶋を見つめていた。
会社の送迎バスに乗った。
会社から最寄り駅までは、およそ…10分ぐらいである。
木嶋には、最寄り駅まで着く時間が、はるかと待ち合わせ場所を決めるのに、有効活用出来るのだ。
相鉄線の中では、夕刊紙を読むのを日課にしていた。
なぜなら…世界は、一分一秒…刻一刻と、時間を刻み続けている。
情報も、絶え間無く…発信している。
掴んだ情報を、取捨選択をするのも、自分自身であるのだ。
携帯からも情報を得ることが出来る!
送迎バスが、最寄り駅に着いた。
階段を下り、コンビニに向かった。
いつも読む…夕刊紙を手に取り、レジで会計を終え、相鉄線の改札口に歩いて行く。
改札を通り、階段を下りていたときに…
「ピローン、ピローン、ピローン」と、携帯が鳴っている。
木嶋は、電話に出た。
「もしも〜し。木嶋ですが…。」
「はるかです。木嶋さん、横浜に着くまで、まだ…時間掛かりますよね?」木嶋に問いかけていた。
木嶋は、
「まだ、時間が掛かりますね!どうしてですか?」はるかに尋ねたのだ。
はるかは、
「見たい店がたくさんあり過ぎて…私が、間に合うか心配です?」木嶋に伝えたのだ。
木嶋は、
「どれかに絞らないと…あと…30分は掛かります!」はるかに答えたのであった。