第278話
大きな交差点の歩行者信号を渡り、神奈川県庁方面に向かって歩いていた。
【見慣れた景色…】
木嶋は、
「待てよ!この道は、いつも…麻美や玲の店に歩いて行く通りだ!ここからの道のりは…大体判る。」自分自身に自信を持ち始めていた。
後ろを振り返り…
富高さんと、小室さんが付いて来ていることを確認していた。
《歩くこと…10分。》
玲がいるクラブ『O』の前に、辿り着いた。
再び、携帯を取り出し…麻美に電話をしたのだ。
「プッ、プッ、プッ、プルー、プルー」呼び出し音が鳴り響いている。
「もしもし、麻美です。」麻美が電話に出た。
「木嶋です。今、クラブ『O』の前に着きました。これからどうすればいいのか?教えて下さい!」木嶋は、麻美に問いかけていた。
麻美は、
「木嶋君、そこから、右に…25㍍歩いて下さい。私も、これから、エレベーターで下まで降り、迎えに行きます。」木嶋に話し…
木嶋は、
「ありがとうございます。」麻美に伝え、電話を切ったのだ。
富高さんは、
「木嶋君、どちらに行けばいいのかな?」木嶋に聞いていた。
「右に、25㍍歩いて下さい…と、麻美さんが言っていたよ!歩きましょう!」木嶋は、富高さんに同意を求めた。
富高さんは、
「了解しました。」と答えたのだ。
小室さんの表情を見ると、何事もなかったように顔色も良く、元気に復活した。
「木嶋、まだ着かないのか?」木嶋に聞いていた。
木嶋は、
「もうすぐですよ!」小室さんに話したのだ。
ビルから吹きおろす冬の風が寒く感じる。
両手を口に近づけ…
《フー》と息をかけた。
朝、会社に出かけるときは、手袋をしている。
ロッカールームで着替えるときに、リュックの中にしまう。
木嶋の誕生日に、はるかが、【誕生日プレゼント】で手袋をくれた。
はるかは、木嶋の誕生日を祝ってくれた唯一の女性である。
今まで、女性と交際しても、長続きはしなかった。
《それだけ…思い入れがある。》
実際、はるかのラストインの日…
「私は、これからも、木嶋さんと付き合いたいと思っています!」はるかは、木嶋に伝えていた。
木嶋は、
「自分も、同じ考えだ…と」はるかに話したのだ。
それが、翌日には、
「お店も辞めたし…忙しいし…会うのを止めようと思いました。じゃあね!」掌を返すように留守電が入っていた。
それが、一週間後には…
「木嶋さん、間違えて…留守電に入れてしまいました。私は、木嶋さんと一緒にいたい!」はるかの熱意に押され…再び、友達付き合いをしている。
麻美は、まだ、このことを知らない。
知っているのは…
木嶋が、はるかにフラれた話しは、メールて伝えていた。
本来なら…
【木嶋を、激励する…】はずであった。
「麻美は、怒るかな?」木嶋は、気にしながら歩いていた。
ふと、前に顔を上げると、麻美が立っていた。
「木嶋君、富高さん、お待ちしていました!」黒いドレス姿で、木嶋と富高さんに挨拶していた。
「木嶋君、そちらの方は…?」木嶋に尋ねていた。
富高さんが、
「自分が答えます。小室さんと言います!」麻美に小室さんを紹介した。
小室さんは、
「どうも…初めまして。小室と言います!」麻美に頭を下げていた。
麻美も、
「麻美と言います。木嶋君と富高さんに、いつも…お世話になっています!」小室さんに伝え、
「ここは、寒いので…店で話しをしましょう!」木嶋たちを、エレベーターに案内した。
木嶋たちも、麻美と一緒に、エレベーターに乗り込み、店に上がって行ったのだ!