第277話
「ようやく関内に着いたか?」ホッ…と一安心していた。
ホームから改札口に向かう階段を、木嶋を先頭に…上がって行く。
小室さんは、右足庇う仕草を見せていた。
「小室さん、右足は大丈夫ですか?」木嶋は声を掛けた。
「大丈夫だ!」小室さんは、気丈に木嶋へ答えていた。
富高さんは、
「小室さん、無理は禁物ですよ!手術をした方がいいのでは…?」小室さんに伝えたのだ。
小室さんは、
「今、手術しても、100%良くなるとは限らない。人工関節を入れて、10年経過したら…再度、手術しなくてはいけなくなる《リスク》はあると同時に不安だ。」富高さんに話していた。
木嶋は、
「小室さんの話していることに…一理ある。自分の身体に《メス》を入れたくないよ!あとは、【ダイエット】をしないとダメだね!」小室さんの身体を見て呟いていた。
小室さんは、体型的に肥満である。
体重を落とせば…膝に掛かる負担も無くなる。
膝は、身体を支えているので、支えきれないと…悲鳴を上げる。
木嶋も、疲れが溜まってくると、足が…《フラつき》始める。
足が、《フラつき》始めたら、【屈伸運動】(くっしんうんどう)をする。
それをすることに依って足が…《シャキッ》と…するのである。
小、中、高校と毎日、グラウンドを走っていたので、足にスタミナがあり、毎年、真夏の暑さに耐えられている。
木嶋が、会社に入社したときは、まだ、地元に工場があった。
卒業するときに、工場が移転して…今の場所に通勤している。
当初は、通勤するのに時間が掛かっていて、
通勤に嫌気がさしたりして、会社を辞めようとしたこともあった。
それを乗り越え、相鉄線と横浜市営地下鉄が開業してから…通勤するルートの選択肢が増えたのだ。
偶然にも、横浜駅で乗り換える相鉄線ルートを選択したため…
はるか、麻美と出会ったのだ。
この選択が違っていたら…どうなっていたのだろう?
未だに、会社の女性社員、陸上仲間の人たちと交流がなかったかも知れない。
階段を上りきり、改札を出た。
再び、地上へ上がる階段を、一段ずつ上がって行く。
木嶋は、Gパンのポケットから携帯を取り出し、 リダイアルから麻美の番号をスクロールした。
「プッ、プッ、プッ…プルー、プルー、プルー」呼び出し音が鳴っている。
麻美が電話に出た。
「もしもし…麻美です。」
「木嶋です。関内に着きました。今いる場所は、大きな交差点にあるコンビニの前にいます。」木嶋は、麻美に伝えたのだ。
麻美は、
「お疲れさま。駅を背中にして、大きな交差点を神奈川県庁方面に歩いて下さい。以前、木嶋君が来たお店から近いですよ!」木嶋に話したのだ。
木嶋は、
「以前…来たかも知れないですが、色んな店に顔を出しているので解りませんよ!」苦笑いをして答えていた。
麻美は、
「そうだよね!玲さんのいるクラブ『O』は分かるよね?」木嶋に問いかけていた。
木嶋は、
「玲さんのクラブ『O』は判りますよ!」麻美に答えていた。
麻美は、
「そこから近いので、目印は、クラブ『O』ね!着いたら連絡下さい!」木嶋に伝えた。
木嶋は、
「分かりました。」言葉を残し、電話を切ったのであった。