第260話
階段を、一段ずつ降りて行く。
生暖かい風が吹いているみたいである。
「なんか…モァー」としているかな?
「間もなく、電車が参ります。危ないですから…黄色い線の中でお待ち下さい。」ホームのアナウンスが聞こえている。
横浜市営地下鉄は、
【ワンマン運転】である。
【ワンマン運転】とは…
「一人で、電車の運行及び、ドアの開閉をすることである。」
横浜市営地下鉄以外の路線は、
運転士と車掌さんが、一人ずつ…各列車の先頭と、最後尾に配置されている。
いずれは…どの鉄道も、【ワンマン運転】になる日が来るのが来ると思うのである!
そんな…気がしていた。
黄色い線の内側に待っていると、
「木嶋、おはよう。珍しいな!市営地下鉄に乗るなんて…」高森さんは、木嶋に尋ねていた。
高森さんは、木嶋が、会社に入社したときの上司であった。
木嶋は、
「高森さん、おはようございます!相鉄線が遅れているらしくて、待っていても…来る気配がないので、こちらにしました。」高森さんに答えていた。
高森さんは、
「そうか…木嶋、早く…嫁さんをもらって、両親を安心させないと…ダメだぞ!」木嶋に話していた。
高森さんが、木嶋の両親を見たことが、一度あったのだ。
それは、姉が、会社まで車で迎えに来たことがあり、警備室から見ていたのだ。
元上司の高森さんに、反論は出来ない。
木嶋は、
「そうですね。早く、いい人を見つけて…両親を安心させたいですね。さすがに…こればかりは、縁ですから…。」高森さんに伝えたのだ。
電車が、ホームに入ってきた。
「プシュー」エアー音を立てながら…ドアが開いた。
転落防止の策があるため、駆け込み乗車は、不可能である。
木嶋は、高森さんと一緒に座席へ座った。
高森さんは、右足の股関節が悪く、杖を使わないと歩くことが難しい。
「誰か…いい人を見つけたか?」高森さんは、木嶋に問いかけてみた。
木嶋は、
「いい人かは…別問題ですが、飲み屋のお姉さんたちと遊んだりしていますけど…ダメですかね?」高森さんに、疑問をぶつけていた。
高森さんは、
「飲み屋のお姉さんって…いくつぐらいの人だ?」木嶋に聞いていた。
木嶋は、
「全部で、3人いますが、一人は、先日…成人式を迎えたばかりで、あとの二人は、自分と同じ年代です。」高森さんに話していた。
「随分と年齢の幅があるな!その中間は、いないのか?」高森さんは、木嶋に問いかけていた。
木嶋は、
「それが、いないんですよね!」困った表情をしながら…
「ハー」と、ため息をついたのであった。
高森さんは、
「中間が、いないのなら仕方ない。飲み屋のお姉さんは、クラブやスナックの人じゃないのか?」
「そうです。高森さんが言われている通りです。知り合ったのは、横浜のクラブ『H』です!」木嶋は、高森さんに伝えたのだ。
「木嶋は、優しいから、騙されないようにしないと…」高森さんは、木嶋に忠告をしたのだ。
木嶋は、
「そうですね。同じことを、会社の先輩方にも言われましたよ!」高森さんに話したのであった。
電車が、会社の最寄り駅に着いた。
木嶋は、
「高森さん、足は大丈夫ですか?」高森さんに問いかけていた。
高森さんは、
「大丈夫だ。木嶋は、バスに乗れなくなるから、先に行っていいぞ。自分は、あとのバスで行くから…。」木嶋に話したのだ。
木嶋は、
「ありがとうございます。先に行かせて戴きます。」高森さんに頭を下げ、その場を離れ、会社の送迎バスが停車している場所に、駆け足で向かって行った。