第255話
最寄り駅の改札を出た。
木嶋の携帯が、
「ピローン、ピローン、ピローン」鳴っている。
この聞き慣れた音は、はるか専用の着信音であった。
「まさか…はるかから、電話があるはずがない。」
半信半疑を抱きながらも電話に出た。
「もしもし…木嶋ですが…。」
「私、はるかです。」はるかが、木嶋に答えたのだ。
昨日まで、聞き慣れた声である。
木嶋は、
「今朝、留守電を聞いたよ!今まで、楽しい日々を過ごさせて頂き、ありがとうございました。」はるかにお礼を述べたのだ。
はるかは、
「今朝の留守電は、間違えて…木嶋さんの携帯に入れてしまいました。ごめんなさい。」木嶋に謝罪をしていた。
木嶋は、
「はい。間違えたとは…どういうことなのですか?」はるかに尋ねていた。
はるかは、
「木嶋さんと、木次谷さんと、電話をするときに、《スクロールバー》を、一つ下げ過ぎてしまったのです。」木嶋に伝えたのだ。
木嶋は、
「あっ…そうなの?木嶋と木次谷か…間違える可能性はあるね。その木次谷さんは、クラブ『H』のお客さんかな?自分は、どうすればいいのかな?、これまで通りなの?」はるかに聞いていた。
はるかは、
「木嶋さんの指摘をしている通りで、木次谷さんは、クラブ『H』のお客さんです。間違えて…留守電に入れてしまい、申し訳ありません。私は、木嶋さんと、これまで通りのお付き合いをしたいと思っていますが…どうでしょうか?」電話の中で、木嶋に頭を下げていた。
木嶋は、戸惑いながらも、
「即答ですか!分かりました。正直に言えば…これまで通りのお付き合いをさせて頂きたいと思います。ただ、明日は、予定が入っているので、会うにしても、来週以降にして下さい。」はるかに話したのだ。
はるかは、
「分かりました。何故?明日は、《ダメ》なんですか?教えて下さい!」木嶋に問いかけていた。
木嶋は、
「明日は…富高さんや、会社の先輩と一緒に、会社の最寄り駅で飲む約束があります!そのあとで、富高さんを誘い…麻美さんのクラブ『U』に行く予定です。」はるかに答えたのであった。
はるかは、
「もしかして…今朝の電話で、麻美さんに、私が、木嶋さんをフッたと思い、慰めてもらうために…連絡をしたのではないですか?」木嶋に話したのだ。
木嶋は、はるかが、話している言葉が、全てを物語っていた。
当たっているだけに、反論をしようにも、上手く言葉が出てこない。
「いや…そうじゃないよ!麻美さんのいる…クラブ『U』に顔を出さないとね!富高さんの顔を見たいと盛んに《アピール》していて、会いたがっていたよ!」木嶋は、はるかに伝えたのだ。
はるかは、
「へぇ〜。麻美さんでも、会いたいなんて言葉を言うんだ。不思議だね!何年も、夜の仕事をしているから、その気にさせる術があるんだ。」木嶋は苦笑いを浮かべるしかなかったのだ。
木嶋は、
「麻美さんは、何年もやっているだけあるね。そういう…はるかさんも、人を乗せるのが上手だよ。」はるかを褒めていた。
はるかも、
「ありがとうございます。」木嶋にお礼を述べていた。
木嶋は、
「はるかさん、来週…いつなら…時間が取れるのかな?」はるかに問いかけていた。
はるかは、
「チョット…待って下さい。」木嶋を電話口に待たせ…
パラパラと、手帳をめくっていた。
「来週は、金曜日でいいですか?」答えていた。
木嶋は、
「来週の金曜日ね。了解しました。もし、都合が悪くなったら連絡下さい。」はるかに話した。
はるかは、
「分かりました。」電話を切った。
木嶋は、複雑な心境であった。
「これでいいのか?」自問自答をしていた。