第246話
「そうだよね…睡眠を取らないと、今日の仕事に差し障りが出るよね。」木嶋は、富高さんに答えたのだ。
富高さんも、
「自分が、若いときなら、多少無理しても大丈夫だが、寝ないで仕事をしたら大ケガをするよ。」
「それもそうだね。」木嶋は、富高さんの意見に納得した表情をしていた。
現場にある掛時計を見ると…午後12時30分を回っていた。
「もう…こんな時間か?富高さん、大森さんが待っているので、現場に戻ります。」木嶋は、富高さんに伝え、その場を離れて行った。
木嶋が、職場に戻ると、大森さんが、缶のブラックコーヒーを右手に持ち、椅子に座って待っていた。
木嶋の作業エリアには、折りたたみの椅子が置いてある。
もちろん、100円ショップで購入した物である。
「木嶋君、どこに行っていたの?随分、待ったよ。」真剣な表情で、木嶋に問いかけていた。
「大森さん、待たせてすいません。先ほどまで、富高さんの現場に行って話しをしていました。」大森さんに、木嶋は答えていた。
大森さんは、
「木嶋君、富高さんと、何かあったの?」木嶋に尋ねていた。
木嶋は、
「昨日、富高さんと、自分の彼女がバイトしている…横浜のクラブ『H』に飲みに行ったんだ。」大森さんに伝えたのだ。
大森さんは、
「昨日って…平日の水曜日だよね?何で…その日なの?飲みに行くのは、いつも週末…金曜日ではないですか?」木嶋に問い詰めていた。
「自分も、富高さんも、週末の金曜日が、飲みに行くのにはベストだよ!ただ、昨日で、彼女が…バイト先を辞める話しが来て…どうしても、ラストインには顔を出してしいと言われてね!」大森さんに答えていた。
大森さんも、
「それで、富高さんと一緒に行ったの?木嶋君、彼女から見れば、一人で来て欲しかったんじゃないのかな?大きなマイナス要因だと思うよ?」木嶋に話していた。
木嶋は、
「大森さんが言われている通りかもね。一人で行こうと考えていたが、彼女自身、《一人で来るとコストが高いから…富高さんと一緒なら来るのにも楽でしょう…》そう嘆願されてね…そのことを、富高さんに話したら、《OK》と回答が来たので、連れて行ったのです。」大森さんに伝えたのだ。
「木嶋君の彼女を一度、横浜の店で拝見したかったね…」大森さんが、木嶋に脅しをかけていた。
木嶋には、苦い思い出がある。
20世紀末…会社の最寄り駅近くの店で…
木嶋と大森さんは、決まってに…月に、1回飲みに出掛けていた。
いつもスナック『N』に通いつめていた。
そこで、木嶋も、大森さんも、お気に入りの女性がいたのである。
木嶋は、電車の時間があるため、早くに帰らないと行けなかった。
大森さんは、家が近いので、遅くまで飲んでいても平気であった。
その後、大森さんは、その女性と同棲しているみたいである。
木嶋の脳裏に、そのことが鮮明に思い出していた。
歴史を繰り返すわけにもいかない。
大森さんを、あえて…誘わないでいたのである。
「はるかと、大森君を引き合わせるのを辞めよう。」
それが根底にあったのだ。
「いつまでも、引き立て役だけはイヤだしね。」大森さんに心の中を透かされないようにしていた。
大森さんは、
「木嶋君、まだ、その彼女と付き合うつもりなの?」木嶋に聞いていた。
木嶋は、
「まだ、付き合うよ!何で…そんなことを言うの?」疑問心を抱きながら、大森さんに問いかけた。
大森さんは、
「このまま…連絡がなく、《さよなら》をされるんじゃないかな?」
ズバリ当たっているので、躊躇いながらも、
「これからも、付き合うと、彼女と確認したから大丈夫だよ!」木嶋は、大森さんに話したのであった。