第244話
溝越さんは、
「そうか…木嶋も、富高も、あまり寝ていないんだな!こう言うときは、慎重にやらないと仕事中にケガをするぞ!気をつけないと…」木嶋に注意を促していた。
「そうですね。ご心配をおかけてして申し訳ございません!」木嶋は、溝越さんに頭を下げたのであった。
返事を聞いた…溝越さんは、休憩所からを離れて行ったのだ。
ここから木嶋の長い一日が始まろうとしていた。
作業服のポケットから、携帯を取り出し、着信履歴とメールの受信BOXを確認するも…
はるかからの連絡はなかった…当然のことである。
「昨日の今日で、結論が変わることはない!はるかの考え方がブレることはない!」木嶋は、自分自身を納得させるように問い掛けていた。
そんな木嶋を見ていた…三谷さんが、
「木嶋、どうしたんだ…浮かない顔をして…」木嶋に話しかけていた。
木嶋は、
「三谷さんに、話した方がいいのだろうか?」戸惑い…躊躇していた。
それは、なぜか…?
「三谷さんは、口が軽い!」そのイメージがあるのだ。
「普段なら話しはするが、今回のことは、自分自身のことだから、話しをしない方がいいかも知れない!」木嶋は、そう考えたのである。
「何でもないよ!」精一杯の強がりを言うのであった。
三谷さんは、
「本当に何もないのか?」ニヤニヤしながら…再度、木嶋に問い掛けていた。
木嶋は、
「本当に何もないですよ!」三谷さんに話したのであった。
三谷さんと、一緒に仕事をしているので、
《ポーカーフェース》を演じていないと…悟られてしまうため、無愛想な表情をするときもあるのだ。
仕事が始まるまで、まだ時間に余裕がある。
木嶋は、携帯を持ち…麻美のメールアドレスを呼び出していた。
「麻美さん、おはようございます!朝早くからメールを送信して申し訳ない!今日の朝、はるかさんから、お別れのメッセージが、自分の携帯の留守電に入っていました。結論から言うと、麻美が、前から自分に話しているような内容でした!友達と言っても、《はるかさんから見たら、木嶋君は、クラブ『H』の単なるお客さんの一人》そんな感じです!」メールを送信したのであった。
麻美からメールが直ぐに返信されてくるとは思わない。
木嶋は、
「ほら…私が言った通りでしょう!」麻美からの答えを予想していた。
それが当たった瞬間、虚しさが込み上げていた。
麻美へメールを送信したあとに、
玲へ同じ内容のメールを送信した。
「フー」と息を吐いた。
外に出て、日差しを浴びていた。
雲の一つない快晴である。
木嶋の心は、
「ザアー、ザアー」土砂降りの雨が降っている。
絶え間無く…止み間がない。
〜♪絶え間無く降り注ぐ この雪のように 二人の愛は終わった♪〜
まさに、この歌詞が、今の木嶋の思いに似ているのであった。
「キーン、コーン、カーン、コーン」
仕事への準備をする予鈴のチャイムが鳴った。
「サアー、仕事をしようか?」
作業エリア内にある…前掛けと保護具を身につけたのだ。
仕事をしていて、少し…眠気が襲っていた。
すかさず三谷さんが、
「木嶋、大丈夫か?」木嶋に声を掛けていた。
木嶋は、
「ゴメンね!危うくケガをするところでした。」三谷さんに答えたのであった。