第235話
「お客様。2名でよろしいでしょうか?」男性店員さんが、木嶋に尋ねた。
木嶋は、
「はい。お願いします。」男性店員さんに答えたのだ。
「こちらにどうぞ…」エスコートされ、空いていた一番奥の角の席に座った。
胡蝶蘭の鉢植えを両手で抱えていた木嶋は、席に座り、
財布から…クラブ『H』なメンバーズカードを、男性店員さんに差し出した。
「お預かり致します。ご指名は…誰に致しましょうか?」木嶋に聞いていた。
木嶋は、
「はるかさんをお願いします!」男性店員さんに伝えた。
男性店員さんは、
「お客様。はるかさん、本日…ラストインで、ご指名の本数が、かなり重複しておりまして…なかなか…こちらに来ることが出来ないかも知れません!ご理解を戴けますか?」木嶋に尋ねていた。
木嶋は、
「分かりました。」男性店員さんへ答えるしかなかった。
「そちらの方は…誰がよろしいでしょうか?」男性店員さんが、木嶋の右横にいた…富高さんに問いかけていた。
富高さんは、
「自分は…指名する人がいないので、そちらに、お任せ致します!」男性店員さんに答えたのだ。
「それでは、こちらで、フリーの女性をご案内させて戴きます!」男性店員さんが、富高さんに伝え、
「女性が来るまで、しばらくお待ち下さい!」木嶋の座席から離れて行く。
上を見上げると…輝かしいミラーボールが回っている。
「もう、この店に来ることもなくなる!」
感傷に浸っていた。
クラブ『H』に通うこと…1年4カ月…。
【我ながら…頑張ったかな?】
《自分で、自分を褒めたい。》
その言葉を思い出していた。
木嶋は、若いとき…色んな店を点々(てんてん)して、とにかく女性にモテたい。
【自分自身を迷っていた!】
そんな心理状態だった。
手探りだったのかも知れなかったのだ。
「これで、関内で腰を落ち着けられる!麻美さんや玲の店にも、顔を出すことが出来るようになる!」
木嶋の考えていることと、富高さんの考えていることも同じであった。
男性店員さんが、ボトルを持ち、女性を木嶋のいる席に連れてきた。
「左が、《あんなさん》、右が、《いずみさん》です。」
木嶋は、
「よろしくです。」頭を下げたのだ。
富高さんの左手に、《いずみさん》
木嶋の左手に、《あんなさん》が座った。
2人とも、
「よろしくお願いします!」木嶋と富高さんに話したのであった。
男性店員さんは、
「どうぞ…ごゆっくり。」木嶋に伝え、席を離れて行った。
あんなさんが、
「お仕事の帰りですか?」木嶋に尋ねていた。
木嶋は、
「そうです。仕事帰りです。今日は、はるかさんのラストインで来ました。」あんなさんに伝えた。
あんなさんは、
「そうなんですか?それで、今日は、はるかさんの指名が重複していたんですね!」木嶋に話し、続けて…
「何か…プレゼントされるのですか?」問いかけていた。
木嶋は、
「花をプレゼントしようと思いまして…今、ソファーに置いてあるのがそうです。」あんなさんに答えていた。
花を見て…
【胡蝶蘭ですか…いいですね!私も欲しいです。プレゼントして下さい。】あんなさんが、木嶋にお願いしていた。
木嶋は、
「今度、クラブ『H』に来たら約束しますよ。」あんなさんに伝えたのであった。
「このお店に、良く来られるのですか?」あんなさんが、木嶋に聞いていた。
木嶋は、
「平均的に、2カ月に1回ぐらいかな?はるかさんがいる時しか来ないね!」あんなさんに答えていた。
あんなさんは、
「はるかさんより、私の方が魅力的ですよ!」木嶋に伝えた。
木嶋は、一瞬…戸惑いを隠せずにいた。
「あんなさんとは、初対面で強烈な《インパクト》が ないんだ。」あんなさんに伝えた。
あんなさんは…
《インパクト》ですか…?
不満げ表情を…木嶋に見せたのであった。