第234話
「やれやれ…そんな感じだよ!」木嶋は、富高さんに伝えた。
富高さんは、
「本当だよね!」木嶋に答えたのだ。
「ガタン、ゴトン」
東海道線が、スピードを上げ走行している。
木嶋の通勤ルートが変わったのは、今から、5年ぐらい前である。
当時は…東海道線で、藤沢駅乗り換え、小田急線で会社の最寄り駅まで通勤していたのである。
毎日、会社の最寄り駅から帰るとき、藤沢駅で、電車の待ち時間があると、同僚の人たちと…
《ファーストフード》や《立ち食いそば》を食べて、家に帰宅したこともあった。
今は、そんなことが出来なくなっている。
その頃が懐かしくなるときがある。
〜♪懐かしい Yesterday♪〜
「木嶋君、思い切って…今日、はるかさんに、想いを打ち明けた方がいいのでは…」富高さんが、木嶋に問いかけていた。
富高さんの言っていることは間違いではない。
木嶋は、
「今日は、そんな話しは出来ないよ…さすがに…」言葉を濁しつつ…
「近いうちに、打開するよ。」富高さんに答えたのだ。
「間もなく…横浜。横浜に到着です。どなた様も、お忘れ物がないようにお願いします。」車内アナウンスが聞こえていた。
木嶋は、
「やっと…横浜駅に着くのか?」富高さんに話したのであった。
膝の上に乗せていた胡蝶蘭を見て、
「木嶋君、胡蝶蘭…大丈夫?」富高さんが、木嶋に声を掛けた。
「大丈夫だよ!」木嶋は、富高さんに答えていた。
東海道線が、横浜駅構内に入った。
スピードを緩め…
木嶋は、座席を立ち、預けていたリュックを、富高さんから受け取った…。
一時、胡蝶蘭を座席に置き、再び、両手で抱えていた。
「プシュー」ドアが開いた。
木嶋と富高さんは、中央の出口階段を降りて行く。
横浜駅は、自動改札になっている…
一旦立ち止まり、木嶋は、後ろのポケットから定期券を出そうとしていた。
富高さんが、
「木嶋君、預かるよ!」木嶋に声を掛け、胡蝶蘭を両手に抱えた。
定期券を、ポケットから出した木嶋は、富高さんから、受けとった。
「ピッ」自動改札のタッチパネルを、一秒翳して、改札を出た。
木嶋の右隣りの改札から富高さんが出たのだ。
「富高さん、こちらです!」木嶋が、富高さんに声を掛けた。
「最短ルートで行けば問題ないのかも知れないが、少し大回りで行かないと…」富高さんが、木嶋に答えていた。
木嶋は、
「少しでも、早く帰りたいのに、逆なことをして申し訳ないね。」富高さんに謝罪した。
コンコースを歩き、エスカレーターに乗った。
大勢の人が行き交う中で、鉢植えを抱えて歩いているのは、木嶋だけである。
小さな花を持って歩く人…
大きな花束を持って歩く人…
木嶋は、咄嗟に判断した。
「小さな花を持っている人は、職場異動なのかも…大きな花束を抱えている人は、自分と同じように…好きな人にプレゼントか?会社を退職した人」と…思わずにいられなかった。
富高さんは、
「木嶋君、花束を持っている人が多く見かけるよね?」木嶋に尋ねていた。
木嶋は、
「春は、出会いと別れの季節だよ!」富高さんに答えていた。
相鉄ジョイナスの中を通って行く。
メインストリートを歩き、橋の袂で一息をついた。
「木嶋君、もうすぐ…クラブ『H』に着くね。」富高さんが、木嶋の右横で囁いた。
木嶋は、
「そうだね。今になって…段々と、握力がなくなってきたよ。」富高さんにボヤいていた。
橋を越え、家電量販店の脇を通り、
見慣れた鉄の階段を…
「カッ、カッ、カッ」一段ずつ…慎重に上がって行く。
富高さんが、クラブ『H』のドアを開けた。
【いらっしゃいませ】
男性店員さんの掛け声が聞こえたのであった。