第233話
「ズッ、ズッ、ズッ」
靴の音が、地下の通路に響いている。
少し…《キツイ表情》を見せながら、エスカレーターに乗っていた。
富高さんは、
「木嶋君。大丈夫?」と声を掛けていた。
「まだ、大丈夫!」富高さんに答えたのだ。
JRの改札を通る直前、木嶋は、
「富高さん、定期券を出さないといけないので、リュックを預かってもらっていいかな?」富高さんに話したのだ。
富高さんは、
「いいよ。」と、気軽に応じ、木嶋は、背負っていたリュックを預けたのだ。
Gパンの右後ろのポケットから定期券を取り出した。
JRは、自動改札化を推進していて、ここの駅でも、いつの間にか…自動改札になっていた。
有人のボックス改札が、ある駅を見つけるのが、至難の業になっていた。
木嶋の家の最寄り駅も、自動改札になっていて、富高さんの家の最寄り駅である【船橋駅】も、自動改札になっているらしい。
通勤で利用している…会社の最寄り駅は、まだ、有人のボックス改札である。
どうやら…近いうちに、自動改札を導入するらしい…。
自動改札もいいが、有人のボックス改札がなくなると、人の温もりがなくなるような気がして淋しくなってしまう。
駅員さんが、一瞬で、キセル(不正乗車)を、発見した瞬間凄いと感じている。
木嶋は、小学生や中学生の夢は、どこでもいいから…
鉄道会社の駅員さんに就職して、
地元の改札口に座り、
「カチャン、カチャン」と、鋏を上下に音を鳴らすのが、
《格好よく》憧れを持っていた。
小さいときは、色んなに夢を見ていたのだ。
夢は、あくまで…夢であって、現実になるのは、極僅か…一握りである。
成長するににつれて、数多く職業に憧れを抱いていくのであった。
Gパンのポケットから、定期券を取り出した。
「ピッ」僅か…一秒くらいであった…
木嶋は、
「富高さん、リュックを預かってくれて、ありがとうございます。」と話し…続けて、
「胡蝶蘭を、自分が、リュックを背負うまで預かって下さい。」富高さんに伝えた。
富高さんは、
「いいよ。木嶋君の預かっていたビールも戻すよ。」木嶋に話したのだ。
木嶋は、
「そうだったね。ビールを預けたままだったんだ。」富高さんに伝え、苦笑いを浮かべながら…
富高さんから、木嶋の右手にリュックを手渡された。
木嶋は、リュックを右肩に掛け…。
更に、右手にビールを持っていた…。
左手に持っていた…胡蝶蘭を富高さんに預けた。
富高さんは、両手に持ち、木嶋が、リュックを背負うのを待っていた。
ビールを飲み干し、リュックを背負い、富高さんに預けていた…
胡蝶蘭を再び、木嶋が、両手に持ち…
ホームに上がるエスカレーターに乗った。
横浜市営地下鉄より、JRのエスカレーターの方が距離が長い。
それだけ…地下深くに掘っていたことが分かる。
「間もなく…3番線に東京行きが到着致します。危ないですから…黄色の線に下がってお待ち下さい。」ホームのアナウンスが聞こえていた。
木嶋は、
「富高さん、この電車に乗って行きましょう!」富高さんに声を掛けたのだ。
富高さんは、
「了解しました。」木嶋に伝えた。
「パーン」クラクションを鳴らし、東海道線が、ホームに入ってきた。
時計は、夜7時45分である。
降りる人は、多くいた。横浜駅と比較したら、半分くらいである。
階段を使い、横浜市営地下鉄へ乗り換える人、改札を出る人。
4番線の横須賀線に乗り換える人たち…
横須賀線が、ホームに入ってきた。
横須賀線から東海道線に乗り換える人も多かった。
木嶋と、富高さんは、東海道線に乗車した。
車内で空いている座席を探していた。
タイミング良く…2人のシートが空いていたので、そこに座ったのだであった。