第227話
仕事始まりのチャイムが、
「キーン、コーン、カーン、コーン」鳴り響いていた。
気持ちを、仕事モードに切り替え、
「夕方5時まで頑張ろう。」自分自身を鼓舞していた。
そうでもしないと、息が詰まりそうである。
淡々(たんたん)と、決められた予定表に沿って仕事をしている。
【何故だろう?いつもと違う。気持ちに張りがない!ヤバイかな?】
木嶋は、そんな雰囲気になっていた。
それを、いち早く察知したのが、三谷さんであった。
「木嶋、どうしたんだ!顔色が悪いぞ!」木嶋に声をかけた。
「普通だよ!」苦笑いをしながら答えていた。
普段から、三谷さんと一緒に仕事をしているので、木嶋の変化に敏感なのであった。 そこへ、溝越さんが通り過ぎて行く。
木嶋は、心臓が、《ドキドキ》していて、
「良かった…通り過ぎてくれて…と」安心していたら、
急に向きを変え…木嶋の元に歩いてきた。
「木嶋、チョット…いいか?」溝越さんが、木嶋に尋ねていた。
木嶋は、
「何でしょう…?」不安げな気持ちを抑えられずにいた。
思い当たるとすれば、
《今日、はるかに渡す…胡蝶蘭ことか?残業のこと?》しか頭に浮かばなかった。
仕事の話しをするには、まだ、午前中であり、残業のことを決めるには、タイムラグがある。
「今日のことだが…夕方5時で、帰りたいか?」溝越さんは、木嶋に話してきた。
木嶋は、心の中では、
「やはり、残業のことか?」一呼吸於いて、
「正直に言えば…夕方5時で帰りたいですが、現時点では、何とも言えません。昼休みに、富高さんの職場に歩いて行く予定なので、回答次第としか言えませんね!」溝越さんに答えていた。
溝越さんは、
「富高も一緒か…そうか…木嶋の個人的な意見は…?」
「今週、職場の生産が多いので、残業をしなければいけないと…思います。最終的な判断は、溝越さんに委ねます!」木嶋は、溝越さんに話したのだ。
溝越さんは、
「そうか…彼女が、店に出勤する時間は、決まっているのか?」木嶋に聞いていた。
「決まっています。彼女の出勤時間は、午後7時〜10時までで、まれに、夜11時まで店にいますよ。」木嶋は、溝越さんに答えていた。
「それなら、残業をやれば…最適だな?あとは、木嶋に下駄を預けた。」木嶋に言い残し、その場を離れていく。
溝越さんの姿を見えなくなるのを確認してから、三谷さんが、木嶋の元に歩いてきた。
「木嶋…あの店に行くのか?」三谷さんが、木嶋に尋ねていた。
木嶋は、
「本人は、今日、ラストインだと言っていますけどね。」三谷さんに伝えた。
三谷さんは、
「夜の仕事をしている人を、最初から信用しないほうがいいよ。」木嶋に問いかけていた。
木嶋は、
「すぐに、自分は、信用してしまうんだよね。」三谷さんに答えたのだ。
「信用するのもいいが、騙されるなよ。」三谷さんは、木嶋に宥めるように話し、その場を離れ、作業を始めたのだ。
溝越さんにしても、三谷さんにしても、木嶋に対して、警告を発していた。
その警告を受け止められるか?
木嶋への試金石になっていた。
昼休みのチャイムが、
「キーン、コーン、カーン、コーン」鳴っていた。
木嶋は、すかさず…富高さんの職場に歩いていく。
キョロキョロと…周りを見渡し、富高さんを探すが見当たらない。
肩を落とし、食堂に向かう。
「もしかしたら、すれ違いだったのかな?」
そう思いつつも、食堂で食事を終えてから、再び、富高さんの職場に行くことを決めたのだ。
食事を終え、再び、富高さんの職場に駆け付けたのであった。