第226話
はるかのラストイン。
布団から出た木嶋は、カーテンを開け、外の天気を見た。
「ザーッ」と雨音がしていた。
「涙雨か…。今日は、ラストイン…そう言えば、夜中から音が聞こえていたのは、雨だったのかな?はるかにしては、珍しく天気が悪い!」木嶋が呟いていた。
いつも…はるかと遊びに行くと言うよりも…一緒にいるときは、比較的、天気が安定していて、崩れた記憶はない。
「空も、泣いているんだな。胡蝶蘭の花を持って行くのに、傘が、余計な荷物だ。帰るまでに止むだろうか…?」不安な気持ちになる。
『ハー』と、ため息ばかりが漏れてしまう。
木嶋は、気を取り直し、朝ごはんを食べていた。
今日のおかずは、焼き魚と、目玉焼き。そして、ご飯に味噌汁である。
食事を終え、テーブルの上にある…日刊スポーツを手に取り読んでいた。
朝、着替えるまでのひと時である。
新聞を読み終え、身体が、まだ、起きていないので、着替えが終わるまで、少し時間が掛かっていた。
家のドアを開け、外に置いてある傘を持ち、開きながら、最寄り駅に歩いて行く。
〜♪駅まで続く道を…二人のペースを合わせ…思いは…砂時計さ…♪〜
この曲のように、一つ、また一つの思い出が、脳裏を掠めて行く。
木嶋の思いは…
「これで、やっと…はるかが、自分のものになる…」達成感が満ち溢れていた。
はるかが、木嶋の告白を受け入れなかったとき、
現実を見つめるまで、かなりの時間が掛かる。 そのショックは、計り知れない。
「ズッ、ズッ、ズッ」階段を一段ずつ…上がって行く。
【KIOSK】で、いつものように、スポニチを購入して、京浜東北線に乗った。
木嶋を乗せた電車が、
「ガタン、ゴトン」走り出した。
横浜駅までは、およそ20分ぐらいである。
右手に持っていたスポニチを両手に広げ、読み出した。
なかなか…新聞を読む時間がない木嶋に、貴重な時間であった。
〜♪花屋の店さきに並んだ…色んな花を見ていた…色取りどりあるけど…♪〜
SMAPの【世界に一つだけの花】を口ずさんでいた。
電車が、横浜駅に着いた。
相鉄線に乗り換えだ。
足取りが、やや重い。
家を出るときは、軽やかだったのに…。
JRの改札口に向かう階段を一段ずつ、降りて行く。
コンコースに出て、相鉄線の改札口を通って行く。
会社の最寄り駅に向かう…電車に乗った。
「プルー」電子音の発車ベルが鳴っている。
「プシュー」ドアが閉まった。
「ガタン、ゴトン」走り出した。
発車したと同時に、寝てしまった。
いつもは、乗り換え駅で寝るのだが、木嶋も疲れているみたいである。
「まもなく、乗り換え駅です。」女性出身の車掌がアナウンスしていた。
ふと、我に返ると、乗り換え駅のすぐにそこであった。
左手に持っていたスポニチを持ち、リュックを背負い、乗り換えて行った。
車内は、
《暖房が効いているせいか?》
木嶋は、【ウトウト】しながら、再び、座席の角に、頭を預けて寝ていた。
会社の最寄り駅は、地下にあるため、トンネルに入る。
その時、木嶋は、目を覚ました。
「もう、終点か…。」
目を擦りながら、リュックを背中に背負い、エスカレーターで改札口に向かった。
改札を出て、会社の送迎バスに乗った。
「今日一日、頑張ろう!」気持ちを新たに、ロッカールームで着替え、職場に向かった。
まだ、仕事を始めるまで時間がある。
職場の近くに、出入り口があったので、ドアを開けた。
先ほどまで、雨が降っていたのに、太陽が顔を出したのであった。