第215話
最寄り駅の階段を上り切り、少し早足で、会社の送迎バスの発車時刻に、ギリギリ間に合った…。
木嶋は、やっとの思いで乗り込んだ。
「フー」と…安心感からか…ため息が漏れ出てしまった。
もちろん、発車ギリギリで乗ったので、空いている座席などなかった。
【会社までの距離は、アップダウンを入れて3㌔ぐらいだろうか?…】
【直線距離に換算すると2.5㌔ぐらいだと…】感じている。
木嶋が、20世紀まで、神奈川県及び会社の代表として、毎年、5月に長野県富士見町て行われていた大会に出ていた時が懐かしい。
仕事が終わってから、会社の周回を走るのが、楽しみになっていた。
21世紀になって…木嶋が、走ったのは…指で数えても両手で足りるぐらいなのだ。
再び、走ろうと思いつつも…一度、目標を見失ってしまうと、再び、闘争心を奮いが立たせるのは難しい。
今まで、
「練習も、真面目に取り組まない人には、負けたくない。」その一心でいた。」
〜硝子の向こうの…鳥は風に舞う…白い窓を開け…〜
この歌の歌詞にあるように、鳥でいたら、歩くことが大変さがなくていいと思っていた。
羽を羽ばたかせ、大空を飛べればどんなにいいことなのだろうと…頭に浮かべていた。
会社のバスが発車した。
「ガチャン、ガチャン」
チェーンを巻いて、走っている音が聞こえている。
いつもは、10分も掛からず、会社に到着する。
しかし、まだ、中間点に差し掛かっていなかった。
「会社のチャイムがなるまでには、無事に着くのだろうか?」不安な気持ちになっていた。
それは、木嶋だけではなく、送迎バスに乗車している会社な人たち、運転手さんもそうである。
中間点を通り越し、坂の頂上には、白いエアータンクを見かけた。
会社の目印になるものであった。
信号が青に変わり、左折をした。
交差点の手前を右折して、正門を無事に通った。
「ご乗車ありがとうございます。本日は、足元が悪いので気をつけて…降りて下さい!」
バスの運転手さんが、マイクを手に取り、アナウンスしていた。
木嶋は、
「ナイス、タイムーヒット。」心の中で感謝していた。
バスを降り、足元を気にしながら、ロッカールームに向かった。
恐らく…外の気温は、0゜cぐらいである。
先ほどまで、木嶋の両耳が寒さで、冷たく赤くなっていたが、ロッカールームは、エアコンがフル稼動している。
エアコンからの暖房で、着替えるのにも楽である。
着替えを終え、足早に、自分の現場に向かって行く。
現場に着いた木嶋は、ライターで、《ガスストーブ》に火を点けた。
仕事が始まるまで、あと10分ぐらい…。
日本経済新聞を広げ、読み始めていた…
渋い顔をしながら読んでいると…
「木嶋、おはよう。何を渋い顔をしているんだ。」 三谷さんが、木嶋に声を掛けてきた。
木嶋は、
「おはようございます。何を渋い顔って…言いますが…今日は、スポニチではなく日本経済新聞を読んでいるのです。」三谷さんに答えていた。
三谷さんは、
「珍しいな!木嶋が、日本経済新聞を読むなんて…どう言う風の吹き回しだ!」
「今、春季生活闘争をやっているから、色んな企業の状況を確認しているよ!」木嶋は、三谷さんに話したのだ。
三谷さんは、
「そうか…今、生活闘争か…もう…そんな時期か?」納得した表情をしていた。
三谷さんとの会話を終え、溝越さんが、現場に来た。
「木嶋、おはよう!電車は動いていたのか?」木嶋に声を掛け聞いていた。
木嶋は、
「おはようございます。電車は、間引き運転していました。送迎バスも、会社に着くのに、普段の倍くらい掛かりました。」溝越さんに伝えた。
溝越さんは、電車、バスなどの公共機関の交通機関の乱れを気にしていた。
「やっぱりな!」溝越さんも、納得顔をしていた。
仕事始まりのチャイムが、
「キーン、コーン、カーン、コーン」鳴り響いたのであった。