第196話
「玲のクラブ『O』に、出向くようになってしまった。はるかと会う前に、事情を説明した方がいいかな?」木嶋は、はるかの顔を立てないといけないとの思いがあった。
「ガタン、ゴトン」
揺れ動いている電車の中で、携帯を取り出し、
はるかのメールアドレスを、受信メールボックスから呼び出していた。
「はるかさん、今週末、会う約束をしていますが、だいたい、何時ぐらいに待ち合わせでしょうか?」木嶋は、はるかに問いかけのメールを送信した。
朝、売店で購入したスポニチを、リュックから取り出した。
普段は、夕刊紙を読むのが日課になっているが、
スポニチを会社から持ち帰ってくることもあるのだ。
特に、今日は、競馬面を熟読している。
木嶋は、プロ野球のシーズンになると、小室さんや富高さんを誘い…良く観戦に行くので、野球雑誌を購入することもある。
その目安は、見出し記事であった。
木嶋が、自分で商品を購入するとき、短絡的に選ぶことが多い。
商品を熟慮するときは、はるかが、ブランド物を選んだときが多い。
はるかが、持っている姿を、自分のなりに、【シュミレ-ション】している。
それが、イメージと合致すれば、購入する決断を下している。
木嶋自身は、商品に、こだわりがない。
敢えてあげるなら、腕時計をこだわるくらいである。
本当に、【欲しい】と思える商品に、なかなか巡り合わない。
安物買いの銭失いはないように、心がけをしている。
ただ、自分が使いたい、買いたいと思った時は、
【ヨドバシカメラ】、【ビックカメラ】など、他店で、自分なりの《プライス調査》をするのであった。
今、木嶋に必要なのは、はるかだけなのであった。
スポニチを閉じ、携帯の側面を覗くと、メールの着信のサインが出ていた。
携帯の受信メールボックスを、スクロールした。
はるかからであった。
「木嶋さん、お久しぶりです。今週末の待ち合わせは、いつもの時間にしようかと思います!何か?都合が悪くなったいのですか?」木嶋に問いかけていた。
木嶋は、
「以前、はるかさんに、夜間高校の同級生が、関内のクラブに勤務している話しをしたと思いますが、金曜日、顔を出さないといけないので、報告をしたのです。」はるかに、メールを送信した。
すぐに、はるかからメールが返信されてきた。
「同級生のお店に、行かないといけないのですか?」木嶋に尋ねていた。
木嶋は、
「バレンタインチョコレートを渡したいと言うので、午後8時以降で、調整しようかと考えていますが…。」再び、はるかにメールしたのであった。
「ピローン、ピローン、ピローン」着信音が鳴っている。
木嶋は、携帯を開くと、はるかであった。
「もしもし、木嶋ですが…。」
「はるかです。チョット、意味が分からないので、電話しました。何故、同級生のお店に行かないといけないのですか?」はるかが、木嶋に聞いていた。
木嶋は、
「今も、メールしたように、チョコレートを取りに来て欲しいと…。」はるかに伝えたのだ。
はるかは、
「それは、木嶋さん、あなたを誘うための口実にしか…私には、聞こえません!そんなに、私より、同級生がいいのですか?」木嶋に、強い口調で話していた。
その口調から、はるかが、怒っていることを、木嶋は、察していた。
「じゃあ、どうすればいいのかな?」はるかに問いかけた。
はるかは、
「私も、一緒に行きます。」木嶋に伝えた。
木嶋は、
「えっ…一緒に、クラブに行くの?」驚いた様子で、はるかに聞いたのだ。
「木嶋さんと、一緒に行きますよ!ただ、クラブの中には、あなた…一人で行って下さい!私は、お店のビル近くに、カフェがあるので、そこで、待っていれば、同級生も、あなたを引き留めることはしないでしょう?」はるかは、木嶋に提案していた。
さすがに、木嶋も、返す言葉が見当たらない。
「同級生に、何て言えばいいのだろう!」はるかに尋ねていた。
はるかは、
「木嶋さんが、考えて下さい。そこへ行く時間は、午後8時でお願いします。」木嶋に話していた。
木嶋は、
「分かりました。そのように、同級生に伝えます。」はるかに話し、電話を切ったのだった。