第193話
木嶋は、
「夜間高校の同級生が、夜の仕事をしていて、《今週末…店に、飲みに来ないか?》と誘いを受けていて、行くべきなのか?正直、悩んでいます。」井野口さんに答えていた。
井野口さんは、
「木嶋君が、その同級生の店に行ってくれば…いいんじゃないか?悩むことでもないと思うが…」木嶋に話していた。
「それが、一番、簡単な答えですが、金曜日、別件の待ち合わせがあるのです…。」木嶋は、井野口さんに伝えたのだ。
「時間を、ズラす方法もあるが…どうだろう?」井野口さんが、木嶋に問いかけていた。
「時間を、ズラす方法もありますが、若い…ガールフレンドに、《いくら同級生でも、私以外の女性と…飲みに行かないように…言われています!」
「若い…ガールフレンドに、釘を刺される気持ちも、分からなくないが、その若い人も、夜の仕事かな?そのような場所に行かないと、出会いもないな!あとは、木嶋君自身の問題だよ!」井野口さんは、木嶋に決断を促していた。
木嶋は、
「若いガールフレンドも、夜の仕事をしていますが、本人は、【アルバイト】だと強調しています!同級生の顔も、立てないといけませんかね?」井野口さんに問いかけていた。
「木嶋君は、優しいから騙されないように…それが、今、アドバイス出来ることかな?」井野口さんは、木嶋に話し、
木嶋は、
「ご意見ありがとうございます。」井野口さんに頭を下げたのだった。
井野口さんとの付き合いは、もう10年以上になっていた。
木嶋に、井野口さんは、【会社のお父さん】的な存在である。
人は、誰でも、迷うときが、一度や二度ある。
自分が、正面を向いた時に、人生経験が豊富な人の意見を、真摯に聞けるかが大切である。
若い人たちと、交流も大事だが、
年配の方との交流も大切だと考えていた。
木嶋と井野口さんは、食事を終えて、トレーを下げながら、会計をしていた。
会計が終わり、トレーの上にあった…器を水の張ってあるところに入れ、階段を降りて行く。
職場が違うので、左右に別れて戻って行く。
木嶋が、自分の作業エリアに戻ると、
ストーブにあたり、腕組みをしながら、大森さんが待っていた。
これが、木嶋と大森さんの昼休みの日常である。
お互い、年齢が近いので、話しはしやすい。
大森さんの趣味は、投げ釣りが専門で、
色んな大会に出ていると自負している。
木嶋は、
「お土産をヨロシクね!」ジョークを大森さんに伝えていた。
実際、大会での成績は、良かったり、悪かったり、調子の波が激しい。
「仕方ないね!」と、
大森さんは、
《ニャッ》と笑いながら…木嶋に答えていた。
大森さんの仕事は、木嶋の職場の仕事に係わっていて、
給料を貰いながら、身体も鍛えられるので、一石二鳥であった。
木嶋が、大森さんと腕相撲をしたら、どんなに、ハンデをもらっても適わないのであった。
「木嶋君、戻ってくるの遅かったよ!」
大森さんが、木嶋に言っていた。
木嶋は、左手にしている腕時計を見た。
時刻は、午後12時25分を過ぎていた。
「あっ…戻ってくるの…遅くて申し訳ない!」木嶋は、大森さんに謝罪していた。
どうやら、大森さんも、悩みがあるみたいであった。
「いつもなら、もう少し早くに来るのに…」大森さんの、ボヤき節を、全開モードに達していた。
木嶋は、
「大森さんは、野村さんか…」大森さんに答えていた。
大森さんは、
「木嶋君は、若い彼女と…うまくいっているのかな?」木嶋に尋ねていた。
木嶋は、
「何で…そんなことを尋ねるの?」大森さんに話したのだ。
「昨日、彼女と、ケンカしちゃったんだ!」大森さんは、木嶋に打ち明けた。
木嶋は、
「ケンカは、毎回だよ!」大森さんに伝えたのだ。
「毎回なんだ!」大森さんは、納得した表情をしていた。
「些細なことで、ケンカするからね。ケンカするほど…仲がいい。そう解釈しないと、身体が持たないよ!」木嶋は、大森さんに答えていた。