第189話
風呂に入りながら、
「何から話しをすればいいのだろう?」悩んでいた。
無理もない。
一週間以上も、はるかと会話をしていないから、話題を探すのに苦労しそうである。
風呂から上がり、着替えながら、携帯を覗いた。
メールも、着信も、まだない。
「ハー」と、ため息が漏れる。
はるかが、家に着くまで、1時間以上もある。
携帯の着信が来るのを待ちわびながら、時間が経つのが、遅く感じていた。
木嶋に、今、必要なのは、はるかの愛情なのだ。
富士松さんの愛情も、受けたい気持ちはあるが、両方を、天秤に、かけることはしたくない。
男性は、誰でも、浮気願望があるのも事実だと思っている。
《一人の女性を愛するよりも、たくさんの女性を自分は、愛していたい。》木嶋も、そう考えている時もある。
木嶋の心の中では、
『いつも富士松さんと交際したい』願望は、常に持ち続けている。
木嶋が、携帯を操作していると、
【携帯チェック】をするのが、はるかの日課である。
「プライバシーの侵害だ!」と、反論しても、
「貴方に、プライバシーなんてないでしょ…」と、言い返されてしまう。
以前、はるかが、木嶋に、
「貴方には、私しかいない!」
その言葉を、聞いたとき…
『グサッ』
胸に突き刺さっていた。
手を当て考えると、はるかの言っていることが、そのまま《ズバリ》当たっている。
木嶋は、携帯を覗かれても、疚しいことをしたなんて思ってもいない。
「麻美と会ったのは、事実だし、隠して疑われるよりも、正直に伝えよう!はるかの《ラストイン》も聞かないと…」木嶋は考えていた。
掛け時計を見ると、夜10時を過ぎたばかりというのに、木嶋以外の家族は寝てしまっていた。
「うちの家族は、朝、早いからね。みんなが寝ている状況で、いつが、《ラストだ》…なんて、とても言える雰囲気ではないかな?普通の会話に終始しよう!」
先ほど、風呂に入って考えていた時と、思考回路が停止状態で、四苦八苦していた。
「毎日、会社で、張り詰めた緊張感と気苦労が絶え間無い。この状況は、不自然ではなく、当たり前なのかもしれない!ストレスが溜まっている証拠かな?」木嶋はボヤきつつ、
炬燵に入り、ウトウト…と。
「スー、スー」寝息を立てて、居眠りをしまった。
「あっ」と、気がつき…
サイドボード上の置き時計を見ると、
午後10時30分を過ぎていた。
30分ぐらい寝ていたみたいである。
この時期になると、家の中では、ストーブや暖房が効いて、うたた寝をしてしまうことがある。
一番、危険なのは、飲んだ帰りの電車である。
木嶋は、土日休みで、家にいると、夕方になると、炬燵の中で寝てしまうことが多い。
父や母に、良く怒られている。
テレビの電源を入れ、半纏を羽織り、ニュース番組を観ていた。
一年に一度は、大きなニュースが出てくる。
今年は、まだ大きなニュースがない。
日本は、治安が安定している。
外国人の人たちが、日本で労働したい気持ちは理解が出来る。
一年間、頑張って働けば、母国に帰国したとき、裕福な暮らしが待っている。
観光に来る人たちも、たくさんいる。
木嶋も、いつかは、はるかと新婚旅行で、海外に行かれる日が来るのだろうか?
【夢か?現実か?…】
『神様が答えを知っているのなら、教えてもらいたい…。』
携帯の着信が…
《ピローン、ピローン、ピローン》と鳴っている。
「はるかからだ。」
木嶋は、躊躇いもなく、電話に出た。
「もしもし、木嶋ですが…」
「はるかです。無事に帰って来ましたよ〜」はるかが、木嶋に伝えたのだ。
木嶋は、
「お帰りなさい。はるかさんの声が聞きたくて、今か?今か?と…待ち遠しかった。」はるかに話していた。
はるかは、
「ありがとうございます。私も、木嶋さんの声を聞いて、安心しました!」と答えつつ…
「私がいないからと言って…浮気をしていなかったでしょうね?」木嶋に問いかけていた。
木嶋は、
「浮気なんてしませんよ。はるかさんが、海外に出かけているときに、麻美さんと、プライベートで、一度、会いました。」と、はるかに伝えたのだった。