第184話
「いつにしようかな?」
手帳に書き込んである予定表を、パラパラ見ながら、大森さんと飲む日にちを決めかねていた。
木嶋は、
「大森さんの予定を、来週末に設定してもいいが、はるかの、クラブ『H』ラストインの日にちが決まらないと厳しいかな…?帰国するまでホールドにするしかない!」ボヤいていた。
仕事の先読みをしても、どうなるか分からない。
世の中は、まだ、不況から抜け出せない!
昨年の《ボーナス》は、溝越さんが話していたように、ボーナスではない。
給料と同じ感覚なのであった!
いかに、無駄遣いをしないようにするには、どうすれば良いのだろう。
はるかが、クラブ『H』を辞めるのは時間の問題である。
木嶋が、はるかと交際しているが、ラストインを先送りしてとは言えないでいた。
あとは、はるか自身が決断をしないといけないなのだ。
木嶋に、不安がないと言えば嘘になる。
クラブ『H』を辞めたら、自分との交際も無くなってしまいそうで、会えないような気がしていた。
「大森さんには、もう少し時間の猶予をもらおう。まずは、話しをしないと…」
木嶋は、携帯を持ち、
【メールにしようか?】
【電話にしようか?】悩んでいた。
メールだと、話しの進捗が見えづらい。
「ここは、思い切って電話をしよう。」
木嶋は、大森さんの携帯番号を、
《メモリーダイヤル》から呼び出した!
画面が、大森さんの連絡先の画面になっていた。
携帯の発信をしたのだ。
「プルー、プルー、プルー」
呼び出し音が聞こえている。
呼び出しているとき、アーティストの曲が流れていた。
「この曲は、誰のだろう?」木嶋は考えてみた。
《サザンオールスターズ》、《矢沢永吉》、《チューブ》
思い当たるのは、まだあるが…
現状は、それしか思い浮かばない。
大森さんの性格を考慮すると《チューブ》はない。
《矢沢永吉》か?、《サザンオールスターズ》か?
消去法で考えると、《矢沢永吉》しかいないと…
一度、電話を切り、時間を空けて、大森さんにかけ直すことにした。
「何度も、着信履歴を残すのも、大森さんに、【プレッシャー】を掛け過ぎてしまう。これは、《ナンセンス》である!はるかと交際してから、木嶋が教わったことである。」
はるかが、木嶋に優しくするのは、
【なぜだろう?】
一人で、その答えを探している。
「自分は、結婚していないから、多少、お金の融通が利くからなのかも知れないな!」木嶋の頭のコンピューターが、そう答えを弾き出した。
木嶋は、不特定多数の女性と交際するほど、器用ではない。
10代、20代の時も、一人の女性を好きになり、その人としか交際はしていない!
会社の中では、富士松さんの存在が、木嶋の心を、
【ユラユラ】と揺さぶっている。
これが、木嶋の決心を鈍らせているのである。
〜♪Let's me back 幸せって…難し過ぎるね♪〜
この歌の歌詞のように、人が、幸せになるのが大変な努力だと思う…
木嶋が、幸せだと感じているのは、はるかと一緒に過ごしているときである。
少しして、大森さんに再び、電話をかけた。
「プルー、プルー、プルー」呼び出している。
今度は、曲が流れていなかった。
「もしもし、大森ですが…」
「木嶋です。大森さん、電話に出れないときは、音楽を流しているの?」木嶋は、大森さんに尋ねていた。
大森さんは、
「そうですよ。車を運転中に電話をしながら、走っていると、白バイに掴まってしまいます!」木嶋に伝えたのだ。
木嶋は、
「そっちは、そんなに厳しいのかな?」大森さんに問いかけていた。
大森さんは、
「検問のことを、木嶋さん、知っていますか?」木嶋に問いかけていたのだ。。
「検問?そう言えば…スピード違反は、国道で、毎日、やっているよ!」木嶋は、大森さんに答えていた。