第182話
国道一号線を右折して、県道を通り、駐車場に入れた、
エンジンを止め、車から降りた木嶋は、
家に向かう帰り道で、
『Denny's』で、過ごした有意義な時間を振り返っていた。
「麻美と玲奈の姿を見ていたら、自分も、いつになるのだろう?はるかか?富士松さんか?と周りから選択してと言われたとき、迷ってしまう。決め手があればいいのだが…出来そうにない!どうすればいいのだろう?」
木嶋が、《ハムレット》の心境は、はるかと付き合いだしてから、ここ2年間の悩みの種でもある。
有効な解決策が見当たらないのも事実である。
麻美に、相談しようにも、言えることでもない。
話しをすれば、
「はるかと別れた方がいい!」
素敵な富士松さんを見つめるたびに、
【金縛り状態】になってしまう自分を変えないと行けない!
「会社の中を見渡しても、自分が、気軽に話しを出来る…女性社員がいないのも欠点だ!」木嶋は、自分を責めていた。
「玲さんに、話すべきか?」
自分が、堂々巡りしていることに気がついた。
『まっ…いいか!いつかは、解決するだろう!』
楽観的に考えるしかない。
歩いていたら家の敷地に入っていた。
【また、何か…心の中で、《モヤモヤ》していて霞がかかっている。バットを片手に、バッティングセンターに行こう!】
木嶋は、玄関横の下駄箱脇に置いてある…
『木製バット』を右手に持ち、家の近くにあるスーパーのビルに入って行く。
このビルは、《バッティングセンター》、《ボウリング場》、《ゲームセンター》、《インドアテニス》などがある。
木嶋は、良くバッティングセンターで、汗を流すこともあれば、ゲームセンターにいたり、家族で、ボウリングをしたり多種多彩である。
テニスは、たった一度…夜間高校に在学していたとき、同級生からラケットを借りてやったことがあるが、自分のセンスのなさに愕然としたのだ。
その時以来テニスをやらなくなってしまった。
木嶋は、小さいの頃から、野球をやっていたが、あくまでも、草野球のレベルであり、木製バットや『金属バット』の両方使い、近所の仲間と遊んでいたのだ。
会社の中の野球チームへ入らずに、仲間が、昼休みに《キャッチボール》や《ノック》をしているときに、一緒に混ぜてもらうことが多かったのだ。
木嶋の頭の中では、野球チームを作りたいと、随分前から考えはあるが、実現が難しいと思っていた。
はるかと出会う前。
正確に言うと、1990年代。
会社の仲間、陸上のメンバーを中心に、他の人たちと交流しようと、雑誌に載せ、メンバーを慕ったこともある。
まだ、若いときなので、失敗を恐れずに、
【チャレンジャー精神】を出していた。
年齢を重ねると、勢いが止まって行く。
会社の中で、若い社員を見ると、
【自分も、そんな時代があったかな!】と振り返ってしまう。
歳を重ねることは、良くも悪くもないが、
いつまでも、気持ちが若くないと自分自身が老けてしまう。
それは、負けを認めているのと同じである。
野球と平行して、陸上をやっていたことが、1990年代は良かった。
はるかと出会うなんて、木嶋が、予想をしたことがない。
ボウリングは、一年に一回、会社の『イベント』で出ている。
イベントが近くなると、練習とは言えないが、ボールの感触を確かめている。
ゲームセンターは、小さい時から親しんでいるので、違和感なく…すんなり入って行く!
いつものように、バッティングセンターのゲージに入り、持ってきた木製バットで、軽く素振りをして、お金を入れて、マシンを相手に打っている。
一心不乱に、打ち込むのであった。
その時、木嶋の携帯が、
「ピローン、ピローン、ピローン」鳴り響くのであった…。