第172話
最寄り駅の自由通路を通り過ぎ、駅ビルの中にある『有隣堂』に行く。
普段から【マンガ本】を読み慣れているが、元プロ野球選手が出版した本や政治家が書いた本などを読みたいと思う機会があるのだ。
エスカレーターで、6Fフロアに上がって行く。
このフロア全体が、本売場であり、広いので、探すだけでも、一苦労である。
各コーナーには、どのジャンルになっているか、分かるように表示をされている。
木嶋は、スポーツコーナーに向かった。
現役を引退したばかりのプロ野球選手や、大リーグで活躍している、【イチロー選手】の書いた本はたくさんあったのだ。
木嶋は、何を読もうか?迷っていた。
小学生の頃の夢は、プロ野球中継が毎日のようにやっていて、《プロ野球選手》になりたいと思った時期もあり、家の近くにある『バッティングセンター』へ、
【木製バット】を持ちながら通った時もあった。
それが、いつしか《バスの運転手》や《マラソン選手》になりたいと思っていた。
【何故?《バスの運転手》になりたかったのだろう?】と考えてみた。
いつも、同じ時間で、同じルートを走行すれば良いと安直な考えがあったのだ。
《マラソン選手》になりたいと感じたのは、日本の男子マラソン選手たちが、オリンピックなどでメダルを獲得出来ないときだったので、《マラソン選手》なら可能性があるのだと考えていたのだ。
それが、いつの間にか、自動車関係の会社に勤務しているのだから、人生は判らない。
その書籍を気に入れば購入して、家で寝る前に、枕元で読むのだ。
木嶋が、有隣堂に来てから、もう、1時間が経過していた。
「今、何時かな?」
左腕にしている腕時計で時間を見た。
「午後5時か…!もうすぐ、はるかが旅立つ時間!成田空港の方を見つめよう。」
6Fフロアからエスカレーターを使って、1Fに降りて行く。
バスターミナル近くで、空を見上げていた。
「この空の向こうに、はるかさんが、ハワイへ行くのか?切ないな!」木嶋の弱気な虫が、一瞬、出てきてしまった。
「仕方ない。麻美さんに電話でもするかな?」
木嶋は、携帯を取り出し、メモリーダイヤルから麻美の携帯履歴を探し、発信した。
「プルッ、プルー、プルー」呼び出している。
「もしもし、麻美です。お久しぶり〜。」
麻美が電話に出た。
「木嶋です。お久しぶり。最近、連絡していなかったから声を聞きたくて…電話しました。」木嶋は、麻美に伝えたのだ。
麻美は、嬉しそうな声で、
「ありがとうございます。木嶋君、何かあったんじゃないの?」木嶋に問いかけていた。
木嶋は、
「別に…何もないよ!」 少し、『ドキッ』としていた。
麻美は、木嶋の行動パターンを先読みしていた。
やはり、同じ年代は、相通じるものである。
麻美は、
「はるかさんと、喧嘩でもしたの?」木嶋に聞いていた。
木嶋は
「はるかさんと、喧嘩したのではありません。先ほど、ハワイへ卒業旅行に出かけたよ!」麻美に伝えたのだ。
麻美は、
「そうなの?はるかさんが旅行に出かけたから、淋しくて私に、電話したの?」木嶋を思いやるように話しをしていた。
木嶋は、
「そうじゃあないよ。麻美さんや子供のことで…最近、どうなのかな?と思ってね!」麻美に話したのだ。
「心配してくれてありがとう…。子供は元気ですよ!」麻美は、木嶋に話しつつ、
「木嶋君、明日!予定が空いていますか?」木嶋に聞いていた。
木嶋は、
「明日は、何も…予定は入っていないよ。何か…あったの?」麻美に尋ねた。
麻美は、
「バレンタインデーも近いので、チョコレートを渡したいので、時間を決めたいのですが…何時ぐらいが良いですか?」木嶋に伝えたのだ。
木嶋は、
「ありがとうございます。明日なら…午前中がいいかな?午後は、家でゆっくりしたいので…。」麻美に話したのだ。
麻美は、
「分かりました。後で、時間と場所の連絡を、メールで送信します。それで、いいですか?」木嶋に聞いていた。
木嶋は、
「それで、お願いします。」麻美に話したのだ。
麻美は、
「それでは、後ほど…。」木嶋に伝え、電話を切ったのだ。
木嶋は、
「明日か…!」
小声で呟いたのだ。