第171話
木嶋を乗せた東海道線は、最寄り駅に着いた。
「短い時間だったが、充実していたかな?」
自画自賛をしながら、家までの距離を歩いていた。
家に帰宅してすぐに寝てしまった。
朝、布団から起きた木嶋は、眠い目を擦りながらカレンダーを見た。
やるせない気持ちになっていた。
「とうとう…はるかが、海外に出かける日になってしまった。今の自分に、何が出来るのだろう?」
ふと…考えて見た。
「そうだ…神社に行って祈願しよう!」
寝間着から私服に着替えて…、
家から歩いて10分ぐらいの距離にある神社に向かった。
この神社は、木嶋が、家族で二年参りするところである。
朝、早い時間だが、神社にお参りが出来るようになっていた。
《チラチラ》と駅に向かう人が歩いていた。
「お参りが出来るなんて、タイミングがいいな!」
我ながら…感心していた。
Gパンのポケットから、財布を取り出した。
「神社に来た時は、おさい銭を【ケチって】も意味がない!思い切って投げ入れよう!」
《小銭よりも、お札がいいかな?》
木嶋は、財布から1000円札を賽銭箱に入れた。
『ガラガラ』と鳴らし、柏手を打ち、一礼した。
「はるかが、無事に帰って来ますように…!」
木嶋は、心の奥からそう願っていた。
「今、はるかが、自分の目の前からいなくなったら…どうしよう?ショックを受けて立ち直れないかも…いや、大丈夫だ!はるかなら、無事に帰って来てくれる!そう…信じるしかない!」
神社の境内から出ていく!
空を見上げると、雲が少しあるが、晴れ渡っていた。
「一週間、どうやって過ごそうかな?はるかといるのが当たり前になっていたから、一人で時間の潰し方を忘れてしまった!」木嶋は呟いていた。
〜♪何もないこの部屋で 夜が明けるまで 仲間たちと話したね あの日♪〜
この歌の歌詞にあるように、一瞬、走馬灯のように、思い出が湧き出ていく。 「ヤバイ…思い出を探し出すようじゃダメだ!」
少し、心のバランスが崩れている証拠であった。
「こりゃー…重症だ!」どこかに、木嶋が休める寄りどころを探し求めていた。
木嶋の携帯が、
「ピローン、ピローン、ピローン」鳴っている。
携帯画面を覗くと、はるかからである。
木嶋が、電話に出た。
「もしもし、木嶋ですが…」
「私、はるかです。木嶋さん、昨日は、ありがとうございました。お小遣いを貰えて嬉しかったです。今、どちらですか?」はるかが、木嶋に聞いていた。
木嶋は、
「今、地元にいて、神社に願掛けをしていました!」はるかに答えたのだ。
はるかは、
「何を、願掛けをしていたのですか?」木嶋に問いかけていた。
木嶋は、
「何をしていたのかは…秘密です!」はるかに伝えたのだ。
「教えてくれても、いいじゃないですか?」はるかは、木嶋に甘える声で、再度、尋ねていた。
「自分のことですよ!いい人に、巡り会えますように…」木嶋は、はるかへ想いが伝われば…と、祈るように話していた。
「そうですよね!木嶋さんもいい年齢ですから、そろそろ考えないといけませんよね!」はるかは思わせながら、木嶋に問いかけていた。
木嶋は、
「そうだね。そろそろ考えないと…。自分と釣り合う人がいれば良いのにね。こればかりは、縁だよね。」はるかに伝えたのだ。
はるかは、
「縁…か!私と木嶋さんとの出会いも、確かに言われて見ればそうですね。」木嶋の話しに同意をしたのだった。
はるかは、話しを続けた…
「木嶋さん、これから自宅を出ます。成田空港に着いたら、電話が出来なくなります。帰国するまで連絡先を変えないようにね。」木嶋に伝えたのだ。
木嶋は、
「了解しました。気をつけて…行ってらっしゃい!」はるかに話したのだ。
「ありがとうございます。行って来ます。」木嶋に話し、はるかは電話を切ったのだ。
木嶋は、はるかとの会話を終えて、心に落ち着きを取り戻していたのである。