第170話
木嶋は、左腕にしている腕時計で時間を確認していた。
「もう…こんな時間か…?」
時刻は、午後8時近くになろうとしていた。
いつもなら、はるかが、クラブ『H』でバイトをしている時刻である。
ふと…疑問を抱いた木嶋は…
「はるかさん。今日は、クラブ『H』へ行かなくて大丈夫なのですか?」はるかに尋ねた。
はるかは、
「明日、ハワイに出発するので、クラブ『H』へ行きません!元々、今日は、出勤予定ではないですよ。」木嶋に話したのだ。
木嶋は、
「そうだよね!出発前日に、クラブ『H』に出勤していたら大変だよね!もし、寝坊したら一大事だね!」はるかに伝えたのだ。
はるかは、
「そうですよ!私は、良く携帯を友達の家やタクシーに忘れてしまうので、クラブ『H』に行くよりも、こうして木嶋さんと一緒にいるのが幸せですよ!」
その言葉を聞いた木嶋は、
「マジで…そう言って頂けると嬉しいね!何て…言葉を返せば良いのだろう!考えつかないよ!」嬉しい気持ちを抑え切れないでいた。
その表情を見ていた…
はるかは、笑顔で微笑んでいた。
「木嶋さん、私、これから明日の最終確認で、友達と会わないと行けないので、これで失礼してしてもいいですか?」はるかは、木嶋に問いかけていた。
木嶋は、
「いいよ。明日、旅立つ準備も終わっているの?」
「準備は、万全です。」木嶋の問いかけに、はるかは、自信満々に答えていた。
「分かりました!」はるかに、優しく声をかけたのだ。
はるかは、
「ありがとうございます。一週間、連絡が出来なくなってしまいますが、私以外の人に、惹かれないようにして下さいね!木嶋さん、浮気性なので、そこが心配ですね!」木嶋に話したのだ。
木嶋は、その言葉を聞いた瞬間、
胸に、
【グサッ】と突き刺さるような思いがしていた。
冷静に考えると…
はるかが、言うのも無理はない。
木嶋は、時間があれば、麻美や玲の店に行って、若い女性のメールアドレスを交換して、メールをしていた。
はるかは、知っていたのだ。
はるかが、たまに、木嶋の【携帯チェック】をするのだ。
疚しいことをしていないので、疑われても否定が出来る。
最も、木嶋が、はるかと別れてしまえば、そんな心配をしなくてもいいが、今は、そんな気持ちはない。
いずれ、そんな時が来ると思いたくない。
「はるかさんと、連絡が取れなくなることは、淋しいね!ハワイから国際電話をするにも、日本と時差があるからね!帰国したら電話をしてね!声を聞かないと、安心が出来ないよ!」木嶋は、はるかに話したのだ。
はるかは、
「分かりました。帰国したら、木嶋さんの携帯に電話します。留守電になっていたら、留守電にいれます!」木嶋に伝えたのだ。
木嶋は、
「よろしくね!」はるかに話し、
はるかは、
「それでは、私は、これで行きますね!」
シートから立ち上がり、木嶋に手を振りながら、階段を、
「カッ、カッ、カッ」
音を立てながら降りていく。
木嶋は、
「フー」と息を吐いた。
「何か…自分の行動パターンを読まれているかな?」一人で呟いた。
「じゃあ。自分も帰るか!」
リュックと会計伝票を持ち、階段を降りていく。
会計を終えた木嶋は、
「ホッ…と」した表情を浮かべながら、
〜♪君だけに…ただ…君だけ…ああ…巡り会うために…僕は…♪〜
口ずさみながら、横浜駅の改札に向かって行く。
改札を通り、木嶋の地元に帰るため東海道線のホームに入っていた。
大急ぎで、飛び乗り
「プルー」
発車ベルが鳴り響く、横浜駅をあとをしたのだった。