第16話
はるかが、カフェレストラン『F』のドアを開けて入ってきた。
「木嶋さん、お待たせしました。遅れて申し訳ありません。」はるかは、木嶋に笑顔で話したのだ。
木嶋は、
「いいえ、どういたしまして。自分も、着いてから時間が経っていないよ。クラブ『H』に出勤前に寄って戴きありがとうございます。」はるかに伝えた。
はるかは、
「バレンタインデーなので、木嶋さんと会ってからクラブ『H』に行った方がテンションが上がりますからね。」木嶋に話している。
木嶋は、
「はるかさんに、気を使わせてごめんなさい。」はるかに伝えた。
はるかは、
「そんなことないですよ。華やかなクラブ『H』にいると、現実とのギャップに戸惑いを感じるのです。木嶋さんといることで、そんな世界から解放される空間があると思うと嬉しいのです。」木嶋に話したのだ。
木嶋は、
「そんなことがあるのかなぁ〜。」はるかに呟いた。
はるかは、
「クラブ『H』に入った瞬間からみんながライバルですから…私は、限られた時間の中で頑張らないといけないのです。」木嶋に話したのだ。
木嶋は、
「はるかさんは、夜遅くまで、働いていると思っていたよ。なぜ?限られた時間なのかな?」はるかに問いかけた。
はるかは、
「事情がありまして、夜遅くまで働くことが不可能なのです。」木嶋に伝えた。
木嶋は、
「そうなんだ〜。」
うんうんと首を縦に振りながらも、今いち、納得が行かないような表情をしたのだった。
はるかは、木嶋の浮かぬ表情を見て、
「何か疑問でも…?」聞いたのだった。
木嶋は、
「いや、疑問なことは…ないよ。華やかな世界にいる人たちは、夜遅くまでいるのが当然と思っていたから…。何て言えばいいのか分からないが、安心したと表現した方がいいかな!ハマると抜けられそうにない世界だよね。」はるかに話したのだ。
はるかは、
「クラブ『H』は、バイト感覚です。長くいることはないと思います。」木嶋に、言葉を返すのだった。
その言葉を聞いた木嶋は安心したのだ。
木嶋が、左手にしていた腕時計を覗くと、クラブ『H』が開く時間が迫っていることを、はるかに伝えた。
はるかも、左手にしている腕時計で時間を確認した。
木嶋に、
「チョット、待っていて下さい」席を立ち、カフェレストラン『F』のドアを開けて、外に出て携帯を片手に会話をしている。木嶋には、会話している相手が判らなかった。
少ししてから、はるかが、カフェレストラン『F』のドアを開けて入って来た。
先ほどまでいた席に、再び、座った。
はるかは、
「クラブ『H』に、電車に乗り遅れたので、30分遅れますと連絡をして来ました。」木嶋に、話したのだ。
木嶋は、
「そんなことしていいの?出勤時間は、守らないといけないよ。」はるかに言ったのだ。
はるかは、
「バレンタインデーなので特別ですよ。」話しながら右手に大きな包みを、木嶋に手渡した。
木嶋は、
「何でしょう?この大きな包みは…」はるかに尋ねていた。
はるかは、
「家に帰ったら開けて下さい。」
木嶋は、
「分かりました。」はるかに言ったのだ。
はるかは、再び、左手にしている腕時計で時間を確認した。
「木嶋さん、私は、これからクラブ『H』に行きますね!」木嶋に伝えた。
木嶋は、
「もう、そんななるの?」左手にしていた腕時計を覗くと、はるかが、クラブ『H』に行く時間が、刻一刻と迫っていた。
木嶋は、
「はるかさん、一緒に行かれなくて申し訳ない。また、プレゼントをありがとうございます。」席を立つ、はるかに声をかけ、木嶋も、会計カードを持ち席を立った。
はるかは、
「いいえ。では、クラブ『H』に行ってきます。」木嶋に、声をかけカフェレストラン『F』のドアを開け、雑踏の中、
「カッ、カッ、カッ」
ヒールの音を響かせて
クラブ『H』に向かい、歩いていった。
木嶋は、
「プルー」と発車ベルが鳴り響く横浜駅の改札口を通り、電車に乗った。
対面シートに一人で座り、はるかに、貰った大きな包みを解いた。すると、手作りチョコレート。中には、マーブルチョコも入っていた。
木嶋には、チョコレートを貰えて、それがリクエストしていた手作りだったのが嬉しかったのだ。
「本当に、手作りチョコレートを作ってくれたんだ。」木嶋は、心の中ではるかに、感謝するのだった。
木嶋は、チョコレートを一欠けら食べて見た。
「美味しい〜。」
木嶋は、
「手作りチョコレートをありがとうございます。美味しく戴いています。」はるかに、お礼のメールを送信したのだ。
はるかから、木嶋の元にメールが来たのはクラブ『H』の仕事が終わったあとからだった。
はるかは、
「ありがとうございます。」木嶋に、メールを返した。
木嶋は、
「来月、ホワイトデーがあるので、手作りチョコレートを戴いたお礼に何かプレゼントをしたい。」はるかに、メールを送信した。
はるかは、
「ありがとうございます。ホワイトデーまでに何か欲しい物を探して見ます。」木嶋に、メールが返ってきた。
木嶋は、
「また、はるかさんが、クラブ『H』にいく日で時間があれば、横浜駅でデートしましょう!」はるかに再び、送信した。
はるかは、
「分かりました。時間を見つけて、木嶋さんとデート出来る日を楽しみにお待ちしています。」木嶋の携帯に送信するのだった。
木嶋は、
「連絡をお待ちしています。」はるかに、メールを送信したのだった。